戦いの火蓋
「本当に転移魔法を使ったんですね。以前、人類にはできないって言いませんでした?」
こっそりついてきていたメイメイが鞄から這い出して辺りを見回す。
「使っていいものじゃない、って言ったんだ。今回は急を要するからやむを得ないと思った。いや……」
それよりもなんでついてきたんだ、と言おうとして飲み込む。
「ごめんね。まさかメイメイが入ってるなんて思わなかった……とは言わないよ。普通に私が立案した」
「私も言っておきます。ごめんなさい。言いつけを破りました。先生にとって私が要らないなんて耐えられない。ごめんなさい。邪魔な時は邪魔ですよね。でも、私にできると思ったことまで、できないって言われて」
何がごめんだよ。謝るのは僕だろう。
「メイメイ。メイメイがいない方がいいなんて、僕は考えたことがない。守るときだって、戦う意欲が湧くってものだ。だから今ついてきていても、邪魔になるとは思わない。ただ、万一苦しい思いをしたらいやだってことだ。そんなことを悩ませて、ごめんな。今まで辛い思いをさせて、ごめんな。もう放っておいたり、しないから」
「先生。私を正面に立たせるつもりはないんですか」
答えを出しづらい問いだ。傷を負うのを見過ごすか、疎外感を放置するか。たった今放っておいたりしないと言った以上、メイメイを盾役にすることになるか。
「メイメイがやりたいと言うんだ。メイメイが傷に耐えるように、これまで心痛むのを耐えたように、僕も心痛むのを耐えよう」
「はい!」
話はまとまった。
「セリナ。ありがとな」
「当然だよ」
セリナには適わない。このぐらいして当然だというのか。
「いや、君が私に感謝して当然ってことだけどね? ……さて、打ち合わせ通りいくよ! ボルフ、メイメイが君についていくこと以外、変更は無しだ」
まず、探知を張り、火の巨人の出現を予測する。このとき逆探知も可能だろうが、望むところだ。
四刻後、僕とメイメイは光り輝く巨大な人型の前に立っていた。
向こうも僕に気づいている。
どうやって味方につけたのか、貴族の私兵である騎士団もいる。
「全軍、前へ」
号令のもと騎士たちが威圧的に靴の音を、蹄の音を、戦鼓の音を響かせる。
「雑兵は私が止めます。先生は、巨人を」
僕はもちろん、メイメイも怯んではいない。
「わかった。無茶するなよ。見ておくから」
「先生こそ、無茶しないでくださいね。見ておきますから」
メイメイは真似て言う。見ていてもどうしようもないだろう、とは言わない。実のところ、メイメイがいると思えば僕は奮起できる。
討つべき敵はレージャ婆、そしてメラー師だ。
「焼いた家の、踏みしだいた無辜の、流してきた悲しみの」
「もう二度と、私のような苦しみを受ける人がいないように」
僕たちは宣言する。
相手には届いていないだろう。
現段階では、の話だ。
「報いを受けさせてやる」
「先へ進む足台としてやる」
そして、戦いが始まる。
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