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爆心

 セリナ宅が遠隔地からの爆裂魔法攻撃を受けた。

 結果は全焼どころか、家は骨格も残さずに消滅してしまった。


「まあ、命あっての、物種か」


 息を切らす。さすがに頭が痛い。無理をしたかもしれない。

 まず、いざと言うときのためずっと前から温存していた魔法障壁の術式が一つだけあった。

 これで四人をあの大威力から守るのは不可能だ。

 近くにいる僕とペルペの二人か、セリナとメイメイの二人のどちらかを守ることしかできない。


 そこで別室にいたセリナとメイメイにこの術式を掛け、僕とペルペには生体魔力を使った防御の魔法を組み立てた。

 ベースになるのは【無敵】と呼ばれる生体強度強化の魔法だ。これで爆発に耐えることはできない。術師が自らに施す術は効率が上がるので僕はできるかもしれないが、ペルペが無理だ。


 そこで【時間加速】を自分に使う。生物は絶えず動いているのであまり加速できない上に精神に負荷がかかるので、普通やらない。攻撃の起動までの一瞬を引き伸ばし、そこで【無敵】の書き換えを行なった。


 これで僕とペルペは大爆発の中生存できる身体強度を得た。その上でペルペに窒息魔法を使う。気息は心なので、心を許した相手にしか使えない魔法で、賭けではあった。だがこれが成功しなければペルペは肺の中を焼かれてしまっただろう。結果的に成功した。


 なんとか全員生存した。

 セリナとメイメイがいる部分の床だけは障壁の中で焼けずに残り、二人は状況を正確に把握しかねているようだ。ペルペは激しく咳き込む。心の準備もないままかなり無茶をさせた。


 自動的に呪詛返しが発動した。術師は内臓の一つくらい潰れたかもしれない。

 それで死ぬとは思えない。

 警戒して、魔法障壁の術式を五つ用意しておこう。一つは予備だ。


「先生! 大丈夫ですか、先生!」


 メイメイが駆け寄る。わけのわからない状況で、最初にするのが僕の心配か。


「大丈夫だ。ちょっと魔法を使いすぎた」


「大丈夫じゃありませんよ! 見たことない顔色してます!」


 たった数ヶ月の付き合いだろう。こういうこともある。


「いや、私からも一度しか見たことない顔色だよ。相当無茶したよね。修行時代もそこまで大魔法を連発したことはないだろ。ちゃんと休めよ君。メイメイ、こいつは休めば元どおりだけどまた無茶しないか見ておくんだぞ」


「はい! 見ておきます!」


 そうだ。言わなきゃいけないことがある。


「メイメイ……メイメイ。聞いてくれ」


「聞いています。いつでも聞いていますよ、先生」


「愛してる」


 あまりにもあっさりしすぎていたか、メイメイはぽかんとしてしまう。口を開いたまま動かない。


「……私としたことが、聞き逃したように思えます。えっと、今なんて」


「言ってほしければ、何回でも言ってやる。僕はメイメイのことを愛している。愛くるしい仕草が好きだ。冷めたようで豊かな表情が好きだ。細やかな気配りができる思いやりが好きだ。他人の苦しみに思いを馳せる優しさが好きだ」


「あ、あ、せ、先生は、先生は! 疲れているんですっ!」


 メイメイは顔が真っ赤で、目がグルグルで、動かしすぎた絡繰のように煙でも吐きそうだ。


「僕は本気だ。僕は君を」


「だから! ……だから、疲れていない時にもう一度言ってください。よければ、ですけど」


 メイメイは恥ずかしげに微笑む。

 ああ、何回でも言ってやる。

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