九話 そうです! ここでは他人みたいなものですよね!
とてもとても高く回り道さえも許さない大きな壁があります? そんな壁あったか?
俺たち普通?とは言えなくともちゃんと生活は出来ていたし、わりかし仲も良い方だと思ってたんだが⋯⋯。
ちなみに『普通』の所に?が入るのは普段から妹の病のせいで拘束されたり変な薬を食べ物に仕込まれたりと普通とかけ離れた生活をしていたからだけど。
「何だろ⋯⋯」
クレアがわざとらしくため息をつく。
「分からないんですかお兄ちゃん。それは兄妹という肩書きです 」
「はぁ?! 」
今なんつったよこいつは⋯⋯
「ですから! 現実世界では兄妹というだけで私とお兄ちゃんの様にどれだけ愛し合っていても結婚する事は出来ず付き合うことさえ周りから隔離されてしまいます。 しかし! この世界では兄妹でも結婚可能なのです! 」
妹が満面の笑みを浮かべて、違いますか!? と豪語する。
本当に外見はこんなに可愛いのにどこでそんな副属性身につけてしまったんだよ⋯⋯
俺のせいなのか? やっぱり俺が悪いのか?
「おい、クレアそれでどうしたんだ? 」
この異世界の地で右も左も分からない状況でこんな発言できる妹の度胸が恐ろしく思えてくる。
「だーかーらぁーこの世界では兄妹で結婚が出来る以上、私とお兄ちゃんは今元の世界で言うなら、他人と同義ということです! そう! 兄妹でもない男女二人が二人暮らしするんですよ!? 」
そう言っているクレアは口元が緩みまくり、口元からは今にもよだれが垂れる勢いだ。
てか、垂れてきてね⋯⋯?
「はぁー、クレアが何想像してるか分かりたくもないがこれだけは言わせてくれ。これまでと関係を変えるつもりは全くない! 」
がーん⋯⋯ とクレアから聞こえた気がした。
「そうですか⋯⋯ 」
クレアは崩れる様にして地面に座りこむ。
「⋯⋯」
「⋯⋯そうですか⋯⋯」
二人の間では珍しく気まずい様な沈黙が続く。
あれ? いつもだったらこんな事では暴走は止まらないんだけどな⋯⋯
「あの、お兄ちゃん⋯⋯やっぱり、私じゃダメなんですか⋯⋯」
「ん? 今何て?⋯⋯」
するとキリッとこっちを睨んできて、
「なら私のどこがダメなんですか! こんなにお兄ちゃんの事が好きなのに! ルックスですか! 顔ですか! いや、時々可愛いのに⋯⋯なんて独り言溢してる事ありますし、顔じゃないんですよね! そうでしたね! お兄ちゃんはもっとお姉さん系で胸の大きな人がタイプでしたもんね! 」
一気に捲し立てるクレアの目には涙が浮かんでいる。
てか、今すっごく聞き捨てならないセリフがあったのだが⋯⋯
いや、たしかに可愛いとは思ってるけど、俺声に出してたのか、しかも聞かれてたのか⋯⋯