七話 ポーチの中と嘆くダメ妹
眠るほど気持ちいい⋯⋯?
ううむ⋯⋯ちょっと気になる、けど⋯⋯見た感じは本当に何処にでもありそうなポーチなんだけどな。
俺がポーチを片手に固まっていると、突然クレア俺の手を掴んでくる。
「ん? どうしたん⋯⋯」
「えいっ」
「は⋯⋯おい!」
クレアがニコッと微笑んできて、次の瞬間あろうことか俺の手をポーチにつっこみやがった。
気づくと同時に、手から体全身に向けてよくわからない気持ち良さが流れて来る。
心地よいような安らぐような⋯⋯うーん⋯⋯懐かしい? 誰だろう⋯⋯
⋯⋯ってね⋯⋯頑張ってね⋯⋯
「え⋯⋯誰⋯⋯?」
突然どこからか声が響き、誰かに抱擁される様な心地良さが⋯⋯それは本当にこのままこれを味わっていたくなるほどで。
なぜだろうか、その声の中にはどこか寂しさや、悲しさその様な複雑な感情すらも感じ取れる。
それでも、大丈夫だと、私が付いているからと言ってくれている様で⋯⋯
その瞬間眠りから目が覚める様にして現実に引き戻された。
どうやらクレアがポーチから手を抜いてくれたらしい。
「あ、ありがとな⋯⋯」
さっきのはなんだったんだろう。
「で、どうだった? お兄ちゃん」
「まぁ、やばいな」
「でしょう? あ⋯⋯」
クレアが何かに気づいたらしく顔を青ざめさせていく。
「ど、どうした?」
すると突然ぽろぽろとクレアは涙をこぼし始めた。
「お、おい!」
「わ、私はなんて失態を犯してしまったんですか!!」
「どうかしたのか? なにがあったんだ?!」
何かそこまでこいつにとって大事な事を忘れていたのか? それにしてもここまで取り乱すなんて⋯⋯
「お兄ちゃんを好きに出来るチャンスを⋯⋯私は、私は! いっそそのままぐるぐる巻きにでもして、お兄ちゃんが起きてしまう前にどうにかして既成事実でも⋯⋯」
「怖えぇよ! お前なに考えてんだよ!」
「何言ってるんですか? ここは異世界ですよ」
さっきまでの泣き顔は何処へやら、冷静な顔をして言ってくる⋯⋯。
「ーーっ! いやさすがにそれじゃ言い訳つかねぇだろ!」
はぁ⋯⋯本当に疲れる。
これからやっていけるか心配なんですが⋯⋯