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六話 うちのダメ妹はこんなんです⋯⋯

「なんだこれ⋯⋯」


 俺はポーチの口を覗き込み、一度顔を上げクレアに聞く。


「うーん⋯⋯」


 すると、クレアも顔をあげると、少し考えるそぶりを見せた。

 クレアはこんなでも実は頭が良かったりするのだが⋯⋯

 そしてすぐに顔を上げるとキラキラと目を輝かせて、


「わかったよお兄ちゃん! これは4次元ポーチ

だ!!」


「某アニメの狸型ロボットがつけてるような?」


 軽く冗談だろと返すと、クレアは何を思ったのかなんの躊躇いもなくポーチの中に手を入れた。


「おい! こんな何かもわからない様な物に手を入れるなよ!」


 慌ててクレアに近づくがクレアはポーチに手を突っ込み反応がない。


「おいクレア!」


「⋯⋯⋯⋯」


 こいつはからかっているのか?


「おい! 冗談はもう充分だぞ! 大丈夫か?!」


 尚も反応しないクレア。

 何してんだよ! 

 俺は急いで妹の肩を強く揺さぶり声をかけ、クレアの顔を覗き込む。


 ん?? 

 こいつなんでこんな幸せそうな顔してんだ⋯⋯?


 必至に揺すってみた妹の顔は、それはそれは緩みまくっていた。


 取り乱して気づかなかったが、よく聞けば小さな寝息を立てている。


「お前寝てるのか⋯⋯?」




 寝てるだけと分かると、途端に全身から力が抜けていく。


「おい起きろよ」


 普段であればブチギレそうなものだが本当に焦った後のせいか、怒る気力すら湧いてこず、優しく肩を揺する。

 が当然起きない⋯⋯どうなってるのだろうか。

 流石にいくらクレアとはいえ突然こんな所で居眠りするわけもない。

 やっぱりポーチが原因なのだろう。

 そこまで考え、ポーチからクレアの手を抜いてみる。


「ふゎぁぁぁ~」


 すると、ようやくクレアは目を覚ました。


「はぁ、良かったぁ。あんまり俺に心配させないでくれよ」


 本当どんだけ、心配させんだよ⋯⋯。


「ん? あぁ、おはようダーリン。どうしたの?」


 まだ少し眠そうに目をこすっている。クレアは何があったのかわからない様子で⋯⋯


「だから誰がダーリンだよ」


 人の苦労も知らずにいつも通りのクレアに凄い安堵感を覚え、自然と頬が緩んでしまう。


「またまた照れちゃってぇ」


 クレアは頬に手を当てて体をくねらせ始め、きゃーきゃーと騒ぎだす。


 はぁ、なんかこんなやりとり朝にもした気がするんだが⋯⋯。


「それより、聞いてよ! 私変な夢見ちゃったよ!!」


「ふーんどんな?」


「気になる? やっぱ気になっちゃう?」


「うっぜぇなぁこのアホ妹は⋯⋯」


 「お兄ちゃん声に出てるよ!? 流石にお兄ちゃんでも私傷つくよ!? 泣いちゃうからね? いいの!?」


 どうやら心の声が漏れてたらしい。


「いや、うんそこまで言うなら聞かなくていいわ」


「ごめんよぉ、調子に乗りすぎましたぁ聞いてください!!」


「はぁ、はいはい聞くから俺に抱きつくのやめろよ」


 どさくさに紛れて抱きついてきてたクレアを引き剥がす。

 

「えーダメなのぉ? まぁ今の所は引き下がるとします。それでね、なんかぁ朝私とお兄ちゃんがいちゃいちゃしてたらぁおばさんに見つかっちゃってお父さんに異世界に飛ばされちゃうって夢見たんだよ!! しかもその世界兄妹で結婚出来るんだよ! そして異世界に行ったら直ぐにお兄ちゃんが私を人通りの少ない細道に連れ込んでね! 想いを告げてくれるの! もちろん私はおっけー、直ぐに結婚しちゃうんだよぉ~なんて素晴らしい世界なんだろうねぇ現実になったらいいのに!」


 俺はあえてつっこまず、


「はぁ⋯⋯⋯⋯」


 深くため息をついた。


「お前覚えてないのか?」


「ん?」


「それだいぶおかしい所あるけど半分ぐらい事実だぞ」


「え? お兄ちゃんと結婚した事?」


「ちっげぇよ!」


 なんか今日はいつも以上にクレアに振り回されてる気がするんだが⋯⋯!


「むぅー、え? て事は、ここ異世界?」


「そうだ、やっと思い出したか」


「あー少しずつ思い出して来た! 思い出した事だし即結婚しようよお兄ちゃん!」


「バカかお前は」


「今からお兄ちゃんはこの人通りのない細道で私を欲望の限り」


「しねぇよ! じゃなくて、クレアいきなりポーチに手を入れて動かなくなってたんだよ」


「あ、そうだった! 確かねぇあの中に手を入れると⋯⋯」


 入れると魔法にかかって気絶したとか⋯⋯。


「なんか気持ち良いというか心地よいというかそんなふんわりとしてきて寝ちゃったっぽい」


「は⋯⋯? なんだそのふざけた理由は⋯⋯なら、ただ心地よすぎてそのまま寝たって事か?」


 するとさっきの心配をしていた自分がバカに思えてきて、怒りがこみ上げてくる。


「なぁ、クレアちょっとこっちに来てくれ」


 俺は優しい笑みを浮かべ、クレアに声をかけると、嬉しそうにこっちに来た。


「なぁにぃ? ⋯⋯て、痛い痛い痛いぃぃぃぃっ!」


 とりあえず左右のこめかみをグリグリしてやった。

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