三話 父からの頼み事
お、終わった⋯⋯⋯⋯
あの人=父さんに報告されるなんて⋯⋯
これで二人での生活ももう出来なくなるんだろうな。
なんだかんだ言って幸せな生活だったんだけどな、クレアだけはなんとかして守ってやらないとな。
「ごめんなさい」
突然クレアが深く頭を下げて謝って来た。
「私が変なことしなければこんな事には⋯⋯」
そう言ったクレアは泣いていた。
俺はクレアには笑っていて欲しい、いつもみたいに馬鹿騒ぎしてる方がクレアらしくて可愛らしい。
だから俺は、
「大丈夫、心配すんな! いざとなったら父さんには俺からどうにか言ってやるし、それでもダメな時は2人で逃げる覚悟だってあるんだからな」
右手の親指を立てて言ってやった。
「うん⋯⋯私のお兄ちゃんは最強だもんね!」
あ、ちょっと本気にしてしまったらしい⋯⋯
涙を拭うと笑顔を見せてくれた。
ドクンッと心臓が高鳴るのが分かる。
これは何なのだろうか時々妹を見てるとこんな感覚になる時がある。
まぁ、すぐに治るから良いのだが⋯⋯。
「それより、これ外してくれない?」
「しょうがないなぁキスは今度にとっといてあげる! ちゃんと初めてはとっておいてよね。まぁ、お兄ちゃんの事だからしたくても相手がいないんだったね」
テンションが復活したクレアに、いきなり心を抉るような鋭い攻撃をされ、胸を押さえ後ずさってしまう。
多少不愉快になりつつも、いつもの事だから特に気にはしない。
こんなやりとりすらももう出来なくなってしまうのかと考えると嫌でも悲しくなってきてしまう。
拘束が解かれ、背伸びをしていると電話が掛かってきた。
~~~♪~~♪
「て、これもこの曲かい!!」
つい叫んでしまう。
妹を睨むとベロを出してテヘペロッとしてくる、ウゼェ……けど可愛いから許そう。
電話は、予想通り父さんからだった。
「何かあったみたいだな」
物凄くごつい声が聞こえてくる。
「⋯⋯」
「二人は付き合ってるのか?」
「付き合ってねうっ⋯⋯」
「そうそう付き合ってるの!」
突然、口元を押さえられて言葉を出せなくなってしまう。
てか何言いやがったか!?こいつ!
「そうか⋯⋯まぁ良いんじゃないか?」
付き合ってもいい、か⋯⋯やっぱりその反応が普通だよな。
(うんうん⋯⋯⋯⋯え、は? はぁぁぁあぁぁあ!!)
「いいのかよ! 父さん!」
「まぁな。 でも流石に日本ではダメだよな」
「日本では? て、付き合ってないって!」
「そうかそうか付き合ってるのか⋯⋯それならちょうど良かった。いやぁそれがな二人に俺の子供としてやってもらいたい事があったんだよ」
父さんが俺たちに頼みごと? 妹と目が合う。
クレアも珍しくて驚いているのだろう。
なんせ、覚えている限りでは父から頼み事された事は無いはずだ。
普段から何を考えているのかも分からず、どっしりしてるイメージしかないのであって⋯⋯。
「その名も異世界生活だ!」
そんな父から放たれたパワーワード。
「は? 異世界生活? 酒飲んでるのか? 父さん」
異世界生活?
何言ってんだよこのアホは。
「まぁ、とりあえず俺の説明を聞け!」
「は、はぁ」
それを聞くと、父さんは童話を語るように一言ずつゆっくりと話を始めた。
「おしまいおしまい」
「て、おとぎ話かい!」
思わず癖でツッコミを入れてしまう。
「いや、本当に別世界で起きている事実だよ」
そう言ってお父さんはさらに話しだした。