二話 これは違うんです!違くないけど、違うんです!!
「お兄ちゃんお兄ちゃん早く起きてよぉ」
「ふわぁぁっ」
「あ、やっと起きた! もう少し早く起きてよ! 休みの日だからっていつまでも寝ていたらだめなんだよ!」
笑顔の似合うクレアが頬をぷくっと膨らませそう言ってくる。
可愛いな⋯⋯。
そうさ、さっきのは夢だった⋯⋯の⋯⋯⋯⋯っ!
──ドアの隣に大きなハリセンが立て掛けてあるのが目に入る。
「現実かよ!」
「どうしたの!? お兄ちゃん急に!」
「これ、外してくれないか?」
「えーせっかく拘束したのにー? まだ何もしてないんだけど」
何かよからぬ事を考えているのだろうか、しきりに口元をにやつかせながら言ってくる。
こいつ何俺にしようとしてんだよ。
せっかくの美少女に育ってくれたのに、重度のブラコンとか⋯⋯
「いや何もしなくていいから早く外してよ」
「うーんしょうがないなぁ、ならぁキスしたら外してあげる!」
クレアが可愛らしく投げキッスをする。
「は? 何言っちゃってんの? ワタシタチ キョウダイ オーケー?」
「否定権はなーい!」
そう言って手の指をくねくねと不規則に動かしながらクレアが近づいてくる。
あ、こいつやばい目してる⋯⋯。
「おい、やめろ! クレア!」
必死に抵抗するも、手足を拘束されていて全く動くことが出来ない。
徐々に近づき、とうとう妹が馬乗りをしてくる。
口からは甘い吐息が出て⋯⋯エロ⋯⋯
て、それどころじゃねーよ!
このままじゃ俺の初めてが妹とかいう黒歴史が爆誕してしまう。
そう、俺は年齢=彼女いない歴の非リアどうて⋯⋯
だから関係ないって今! 誰に説明してんだよ!
「あ~お兄ちゃんだいしゅきだよぉ」
やばいってこれ誰か本当に助けて! て、来てくれるわけないか……。
今現在父さんは仕事で東京に単身赴任、母さんは父さんの話によるとクレアを産んだ後に病気で亡くなってしまったらしい。
その時俺は2歳以上だったはずなのだが何故か全然母さんについての事は思い出せない。
そう、現在3人家族で父が単身赴任で家に居ない事から、俺達は二人暮らしをしているのだ。
て、説明してる場合じゃなくて!
本格的にやばい状況で焦るが、焦ったところで何かが変わる事もなく。
妹を見る。
本当に妹なのか疑いたくなるほどに整った顔、本気で好きだと言ってくれるとこ。
嬉しく無いわけ無いに決まってるのだ。
まぁ、こんな美少女なんだから妹でももういいや⋯⋯⋯⋯
俺は抵抗するのを諦めて目を閉じる。
そして、ガチャッとドアが開く音がして⋯⋯
「あなた達何をしてるの?」
あ⋯⋯⋯⋯⋯⋯
俺達は、二人揃って固まってしまう。
ドアを開けたのはお父さんがいない間に時々僕達を見に行く様に言われている親戚のおばさんだった。
やばいみられた⋯⋯
「あ、違います! 勘違いしないでください! そういうわけじゃ無いんです!」
「しょ、そうそう。ぜんぜぇんそんな感じじゃ、にゃのよ。私とお兄ちゃんは兄妹にゃのよ、そんな事するわけないじゃなゃい⋯⋯」
テンパりすぎて猫の様な言葉が混ざり始めてる。
「いや、反論は要りません。流石にこれはあの人に報告しときますね」
そう言うとおばさんは気味の悪い物を見るような顔を残し、部屋から出て行った。