十二話 ドッキリ大成功!
どこから出したのか謎な【ドッキリ大成功】とでかでかと書かれた看板とこれまたどこにあったのかも分からないスマホを片手に持ちこちらに駆け寄ってくる。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん今どんな気分〜♪?」
「どういう事だ? ポーチは? てか、なんでスマホ持ってるんだよ」
今だに状況に追いつかない俺はこめかみを押さえ、深呼吸を一つ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんってばぁ、普段馬鹿だと思ってた妹に一本取られるってどんな気分〜?」
「⋯⋯⋯⋯」
「まだ分からないのかなぁお兄ちゃん❤︎ ん? どしたの? ちょ、あっ⋯⋯おにっ、いたぁあああ!!」
俺はこれでもかと煽ってくるクレアに無言で手招きをし、何の疑いもなく近づいてきたクレアのこめかみに両手でグリグリをおみまいしてやった。
気が晴れた時にはクレアの目尻には涙が浮かんでおり、崩れ落ちる。
やりすぎてしまったかな⋯⋯。
「⋯⋯で、さっきのはどう言う事だ?」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯ぐすっ」
「あぁ、もう分かったから、俺が悪かったから!」
「⋯⋯何か今度お願い聞いてくれる⋯⋯?」
上目遣いに聞いてくる。
これは⋯⋯反則だろう⋯⋯
「あ、あぁ。俺に出来る事なら?」
「やったっよし、録音完了っ」
跳ね上がったクレアの明るい声に続くようにして繰り返される、先ほどのやり取り。
こいつ⋯⋯。
「まぁ、大きな収穫でホクホクな私が説明するとね、さっきポーチの中に手を入れた時にね偶然かスマホを発見しちゃって、異世界でおどおどしているお兄ちゃんの写真をいっぱい撮ろうと思って隠し持ってたの」
「⋯⋯⋯⋯」
こいつはどうしてこうも考える事が残念なのだろうか。
本気で頭が痛くなってきた俺は額に手を当て溜息をつくと、先を促す。
「で、ポーチ投げたらあんな飛んじゃって、いやぁあれは本当びっくりしたね。あのポーチすごいねー!そしたらね、 突然頭の中にポーチを私の元に戻す方法みたいなのがいきなり浮かんでくるの。半信半疑だったけどこれでお兄ちゃんの可愛い写真撮れるかも! って思ってやってみたら今に至るわけ!」
頭が痛いです。 帰りたいです。
なんでそうゆう所だけは頭の回転早いんですかね⋯⋯。
「て事はあれも全部演技で元々死ぬなんて思ってなかったってことか?」
「いや、あれはガチで死ぬかと思ったよ」
聞いて、もう一度クレアを見てみると確かに顔からは冷や汗が出て少しスマホを持っている手も震えてるいた。
「お前って結構タフだよな」
「もちのろんだよ! お兄ちゃんの為なら火の中、水の中、異世界だって行っちゃうってやつだよ!」
「おい、最後のは絶対俺のためじゃないよな!」
「そんなことないよぉ私とお兄ちゃんの未来が明るくなるためだよ! これで道が拓けたね! 結婚しよう!」
クレアがわざとらしく「きゃぁ」とくねりだす。
「お断りします。 それよりポーチまだ光ってるな」
クレアの肩がガクッと下がる。
「はぁー⋯⋯本当だね。 このポーチ何なんだろうね」
そう言ってポーチを覗くと、何かを見つけたようでそれを取り出した。
「おい⋯⋯なんだ? それ」
何故か今回は眠ることもない。何か条件でもあるのかもしれないがそれは時間がある時にでも確かめよう。
「なんかの参考書っぽいね。名前は『~異世界チュートリアル~』て書いてあるけどこれってお父さんが言ってたやつだよね……」
「本当そのままじゃん。誰だよそれ書いた奴」
クレアはそれを俺に渡してくる。
「作者八神 誠て、俺らのお父さんじゃねーか」
本当にあの人は何者なのだろう。
自分達の親のはずで本来なら一番身近な存在であるはずなのにこんなに分からない事が多すぎるなんて思わなかったな。
クレアがこっちを見てるのが分かり、俺もクレアを見て二人頷くと本を開いた。




