一話 そんないかがわしいDVDなんて知りません!
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静かな部屋に突然変な歌が流れ始める。
目覚ましアラームの音の様だ。
「なんだ? このやばい歌は」
内容は妹の事が好きで好きでどうしようもない兄の思いを歌にした物だった。
俺は、八神 白夜。
この日もいつも通り騒がしく覚醒した。
カーテンの隙間から漏れる太陽光が眩しく目を擦、ろうとして⋯⋯。
「て、あれ? 手が動かないんですけど⋯⋯」
動こうとすると金属の擦れる音が虚しくするだけで全く動かない。
布団がかかっていて分からないがどうやら俺は拘束されているらしい。
まぁこれらの犯人は分かっている。
犯人は俺の妹の八神 紅麗亜
だ。
今の僕の状態はと言うとベットに仰向けで拘束されていた。
──ガチャッと、ドアの開く音がする。
「ダーリン起きたぁ?」
「誰がダーリンだよ!」
「もうまたまた照れちゃってぇ」
そう言って近づいてくる犯人の姿が目に移る。
俺の2歳年下であるクレアは16歳で高校一年。
容姿はというと、特徴的なのは炎ように真っ赤な紅色をツインテールに結んだ綺麗な髪と、同じく紅色の透き通った目、それに対し透き通るように白い肌は紅色の髪と目と、うまく調和していて美しい。
まるで人形のように可愛い見た目の、素晴らしい妹のはずなのだが重度のブラコンという病を抱えている。
いつからこんなになってしまったのだろうか⋯⋯
ちなみに俺は身長は平均的、顔はそこそこ(自意識過剰の可能性あり)特徴的なのは銀髪のショートに青い目をしているぐらいの普通の高校三年生だ。
「で、どうして俺はこんな状態なんだ?」
妹からは笑顔のはずなのに殺気の様なものが感じ取れる。
何故なのかな⋯⋯?
「うーんそれはねぇ、お兄ちゃんがいけないことをしてしまったからだよぉ」
「俺、何かしたか ⋯⋯⋯⋯?」
「お兄ちゃんはこの私を傷つけてしまったんだよ」
「は?」
重々しいオーラが部屋中を満たし始めた。
これはやばい⋯⋯⋯⋯⋯⋯
この雰囲気のクレアは本当に何をするか分かった物ではない。
でも本当に心当たりがないんですけど。
昨日までは普通にいつも通りだったはずだ、少なくとも寝るまでは⋯⋯
本当に何があったんだ?
すると妹は一枚のDVDを取り出した。
「──なんだそれ?」
それは身に覚えのない、エッチなイラストが描かれているDVDだった。
「ふーんとぼけるつもり?」
「いやいや本当に知らないんだけど」
「あらぁ、自分のバックの前ポケットに大事に袋に入れてわざわざ違うケースに入れていたこのぶつはお兄ちゃんのじゃないんだぁ」
「は?」
なんだそれ⋯⋯⋯⋯
あ、昨日学校で友達に貸していたドラマのDVD返してもらったんだった⋯⋯
どうやら中身を間違えて入れてしまったらしい。
いやそれともわざとか?……
「ねぇ、お兄ちゃんは、こうゆう人が趣味なんだ」
妹のオーラがより重々しいものに変わる。
DVDのタイトルは「巨乳大図鑑」。
あいつなんてもんを入れてんだよ!
思わず心の中で叫んでしまう。
「巨乳かぁそうかそうか私みたいな胸じゃ満足できないのかぁ」
そう言ったクレアの手にはいつの間にかハリセンが持たれていた。
「おい、誤解だって誤解!」
「私の胸じゃだめなのかぁ⋯⋯」
そう言って自分の胸を触って確認をしている。
(いや、普通に高校一年生にしては大きい方だと思うんだが⋯⋯)
そんな俺の内心を知らずか、クレアは片手にハリセンを持って少しずつ近づいてくる。
「ちょ、ま、待って!」
「言い訳なんて聞いてあげない!」
クレアはそう言うと毛布を剥ぎ取る。
次の瞬間、大きく振りかぶられたハリセンは一直線に僕の頭に向かって振り下ろされた。
パッチーーン!
話聞いてくれよ⋯⋯⋯⋯俺は覚醒してほんの数分で再び気を失った。