真琴と先輩~天浜先輩のスタイリッシュな下ネタ問答賢者タイムはまだこない~
「――ふう、ランキングの目処はついたかな」
「いったい何の――……やっぱいいです」
天浜先輩は年上の女子大生だ。付き合っている訳ではないが、今は二人で都内の新築ラブホテルにいる。
「これこれ『初心者カップルにお勧めラブホ10選』の選定よ」
「聞きたくないからいいって言ったんですよ」
先輩は極度に偏執的な恋愛依存体質だ。
ただ、そのお眼鏡に適わず、僕は記号的役割として居る。
「なぜ今ラブホ特集かって? それはね――――………」
蘊蓄を聞かされながら、切り上げる算段をつけていると、先輩が急に話題を切り上げた。
「思い出した。マコ君に相談したいことがあったのよ」
「え? 嫌です。何で僕なんですか?」
拒否するが、先輩は気にしない。
「中学生の性的欲求は世界を変えるからよ」
「何を馬鹿な「言葉って不思議でね、言い方で意味合いが変わったりするの」
語り出した。仕方なく相づちを打つ。
「はあ。えっと、それはどういう……?」
「例えば『親バカ』って言うとほっこりするけど、『バカ親』って言うと否定的になるわよね」
「ああ、なるほど確かに」
「マコ君を『童貞臭い』って言うと普通だけど、『臭い童貞』って言うと変態性が増すわよね」
「あんただけだよそんなこと考えてるのは」
「あたしたまに合コンをするんだけど」
「週8回がたまにですか」
「最初の自己紹介で躓く初心者って多いのよね」
「まあ、初心者ですし」
「それって、好印象を持たれない怖さ、みたいなのがあると思うの」
「で?」
「初心者にも簡単に使えるちょいエロ一問一答を作ってみた」
「話が繋がりませんが」
「ウィットに富んだジョークは必要でしょ?」
「絶対に「はい、これ読んで」」
グイグイ被せてくる。仕方なく諦めて読む。
「えっと、何々…好きな数字は?」
「69……いや、48かな?」
「どっちでもいいです…好きな色は?」
「サーモンピンク」
「…好きなメーカーは?」
「SEIKO」
「そろそろ怒られますよ…好きな諺は?」
「青菜に塩」
「はいダウト!」
先輩は目をしばたかせた。
「何で駄目なの?」
「説明したら俺も同類でしょ」
こうなったら言うしかない。
「そもそも先輩、処女でしょうが」
「……処女だから見える景色もあるのよ? だからあたしは処女を貫いているわけ」
「いや意味がわ「ちょっと待って」」
先輩が輝きを増す。
「処女なのに貫くって!? 卵が先か鶏が先かって感じ!」
「病院が先ですね」
先輩は相も変わらない。もとい、あいもわからない。