"着てない"
今回から本編です
目を覚ますと、やはり私は石造りの牢屋の中に居た、夢オチを期待したが現実はそこまで甘くないらしい
どのくらい寝ただろうか…
窓すらないため時間などさっぱり分からないが深い眠りだったのは確かだ
「今日のメシだ」
いつの間にか私の牢の前に立っていた看守がパンを1つ放り投げて来た
よく考えたら眠る前から何も食べていなかったことに気づく
私は一心不乱に、まるで空腹の野生動物かのように目の前のエサを貪る
─エサを全て喰いきった後、また自分の情報について分かることがないか考え始めた
(私に近しい人物なら1人くらい思い出せるかもしれない)
(なにか牢屋の中にあるものから連想して思い出せることがあるかもしれない)
(私の服のポケットの中になにか入っていないだろうか…服?)
色々考えてみたが、
思い出せない 分からない 知らない 着てないだった
特に今まで気づかなかったのがおかしい部分が一つあったのでもう一度言おう、
”着てない”
なんでや、なんで今まで気付かへんのや
道理で肌寒いと思ったわ
錯乱しすぎていて(今もだが)鏡がないからと自分の容姿を確かめるのを諦めていたが、視界で捉えられる範囲の情報すらまともに捉えてなかったとは…
そうだ、
空腹のせいだ!
空腹だったのが悪い!
ワタシ ベツニ アタマ ワルクナイ!
空腹だった事にすら気づいていなかった私は、とりあえず空腹のせいにして自尊心を保った(末期状態であるため、裸である事への羞恥心はまだ感じていないが後に地獄を見る)
改めてじっくりと自らのむき出しになっている体を見てみる
性別は女性
年齢は…かなり幼いようだ、7.8歳程度だろう(自分で言ってて悲しいが、身長が無機質な部屋過ぎてわから無いのでとりあえず適当に胸で判断した、実際は成人かもしれない)
外傷は無し、肌の色も青白くなく至って健康
ただ、食事が十分に取れていないのでかなり痩せている
分かったところでどうしようもない事が沢山わかったが、何も分からないよりは多少マシだろう
-次にやることが思いつかないので、とりあえずどうしたものかと途方に暮れているといきなり私が寄りかかっている壁の反対側にいつの間にか黒い軍服を着てガスマスクを付けた私と同じくらいの年齢であると推測される(自分と同じくまた胸で判断した)少女が居た
「ねぇ、ここから出ない"マリー"?」
そうか、私の名前は"マリー"
呼ばれたおかげでとりあえず名前だけ思い出すことが出来た…
だが今また疑問が生まれた、あの少女は誰だろうか?
気になったのでとりあえずその事も聞いてみる
「勿論、出られるのなら出たいに決まっているさ!
だが、その前に君が誰かということが知りたいんだけどいいかな?」
少女は驚いた後、少し悲しそうに…だが、なにか察したように答えた
「私はミソラ
記憶を失ってしまったのね…道理で話し方が変だと思った
可哀想なマリー…まぁ、あんな事があったんじゃ仕方ないし思い出さなくても良いかも」
それは困る
だが、そこまで酷い過去があったのだろうか…(そりゃ、大犯罪者扱いを受けているのだから当たり前だが)
後、記憶を失う前の私はどんな人物だったのだろうか?
悪人だったのか、善人だったのか
現にいま牢屋にいる訳で、幼い少女にしか見えないとはいえ悪人の可能性が勿論高いが、だとしたらあの少女は何故私を助けようとするのだろうか?
何か彼女にとって利益があるのか…
それとも彼女も悪人で私の仲間だったのか…
-自分がなぜ逮捕されてるのか
そして、何故自分が大犯罪者扱いを受けているのかが分からない私にとってはとても考えが追いつかない事だった
「考え事は済んだ?
マリーはいつも考え事が始まると止まらなくなるんだから…
さぁ、ここから出るよ!」
記憶を失う前の私も今と同様面倒臭い奴だったらしい
それはさておき、どうやって脱出するのかさっぱり分からないが助けて貰うことにした
とりあえず心配なのでどうやって脱出するのかだけ聞いておくことにした
「わかった、ここから出よう!
ところでどうやって出るんだい?」
少女は自慢げに答える
「魔法を使うの!
魔法を使えば直ぐにここから出られるわ!
魔法を使える人は希少で少ししか居ないのよ!」
それはすごい…すごい
私は訳が分からなくなり、
"すごい"
としか言えない頭の悪い機械のようになった、これ以上考え事をしても無駄なので私は思考を止めることにした
「すっごーい!見せてみせて!使って使ってー!早く出してー!」
少女は少し困惑しながらも呪文を唱え始める
すると直ぐに目の前が光で見えなくなり、森の中に立っていた
ここまでお読みいただきありがとうございます
脱出編でした!