表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/71

53.5 回想(リリス②)

 理想のざまぁを決めたものの、もうひとつ懸念事項が増えた。会わせたらシナリオが始まるんじゃないかと怖くて、ずっと内緒にしていたがリストに黒猫がバレてしまったのだ。



 でもセリアは破滅を呼びそうな子ではないし、アンカー家みんなでダーミッシュ家を訪問したのだが…………弟が可愛い。さすが私の推しメン。尊い。



 憧れの人セリアの前で真っ赤になって、「格好よくなります」って……でもお姉ちゃんエンディングスチルで知ってるの。リストは大きくなってもフワフワ可愛い系童顔男子だってことを!



 それよりも私は途中から弟のことどころでなくなった。



 昼食会を終えて庭のお茶会の場に移動すると茶髪の少しツンツンした短髪、猫目気味の茶色い瞳、少し日焼けした健康的な肌に、長身の真っ直ぐに背筋が伸びたイケメン執事が微笑みながら出迎えてくれた。



 私のストライクど真ん中だった。


 油断していた。攻略対象者は見慣れたし、そこらへんのキラキライケメンなんぞなんとも思わなかったのに……控えめイケメンってジャンルは想定外だった。



 テオさん…………貴方のようなモブがこんなに格好よくて良いのか?いや、死人役だったエルンスト様も相当な硬派イケメンだった……恐るべしショコラマジックの世界。




 でもどう見ても執事のテオさんはセリアに思いを寄せている雰囲気で、一目惚れした瞬間失恋決定。

 前世の記憶が戻り推しメンだったリストが血の繋がった弟と判明し、思い出し2秒で即失恋。

 私は乙女ゲームに転生したのに恋愛に見放されてる。でもまた諦めるには早い。テオさんはまだセリアと両思いでもなさそうなので、今はそっと見守ることにした。



 ダーミッシュ家から自宅に帰る馬車の中では、リストがセリアを振り向かせると意気込んでいて私も応援したくなったが、曖昧に微笑んだ。



 正直学園内にライバルが多すぎる。学園が再開されるとセリアへの注目度が半端ない。本人は暴走したギュンター様を押さえ込んだ強さで注目されてると思っていたが……ダサめのカツラを取り、堂々とした彼女は美人なのだ。



 艶のある黒髪には太陽の光を反射させ天使の輪ができ、前髪が短くなったことで闇より深く吸い込まれそうな涼しげな黒い瞳が露になり、二つの黒によって白い肌が陶器のように輝く。



 その美人の隣には主であるエミーリア。彼女はさらに綺麗でまるで芸術品のように美しい。そんなヒロイン2人が並んで歩いていたらもう……あぁ!スマホで連写したい!

 クレアさえ暴走してなかったら、綺麗系、可愛い系、クール系の夢の全ヒロインの共演が果たせたのに……。



 でも悪いのはマンハイム子爵やその後ろの黒幕であって……養子にならなければ本来の明るく天真爛漫な良い子だったのかもと思うと複雑だ。




 セリアは過去の功績と美しさから、各方面から狙われることになった。その時こそ我々セリちゃん見守り隊の出番である。私たちのアイドルは安易に利用させては駄目だと連携を組んで守った。

 それでも本気でセリアを好きな男性もいて、その純粋な恋心までは邪魔できず、見守るしかなかった。



 そんなライバル多きなか、エルンスト様があっという間に黒猫(セリア)を捕獲した。それはもう他を寄せ付けぬ見事なまでのストレートアタックの圧倒的スピードでセリアを逆攻略して、婚約まで持ち込んだ。



 私の予想ではアランフォード王子のハッピーエンドだったのだけれど外れてしまった。死人役モブが攻略対象者を押し退けて、ヒロインを逆攻略するなんてシナリオには全くなく、乙女ゲーム「ショコラマジック」の世界であっても確かな現実の世界だと実感した。



 セリアを狙っていた男子は、エルンスト様には勝ち目がないとすぐに身を引いた。見守り隊の一部も悔しそうにしていたが正解だと思う。

 エルンスト様は黒猫への積年の想いと、密かに惹かれていたセリアに正体を隠され逃げられ焦らされた結果、ヤンデレ化していると私のオタクの勘が言っており、敵にまわしてはいけない。



 セリアは鈍感だからいつか地雷を踏み抜いて、監禁エンドになりそうでハラハラする。先日も危なかった。あれはヤバい。




 そしてライバルだった令嬢をもセリアは攻略していた。転生者なのに誰もかも味方につける生粋のヒロイン……恐ろしい子!



 セリちゃん見守り隊のメンバーは次々と増え、今やアランフォード王子の親衛隊と並ぶ二代派閥になった。

 しかし実はアランフォード王子は先日セリちゃん見守り隊に加入したため、現実は最大派閥になってしまった。『セリアの平穏=エルンスト様の冷静さ=アランフォード王子の命の安全』とのことらしい。



 見守り隊には現在、王族2名に次期公爵をはじめ上位貴族がずらり……私がリーダー改め最高顧問で良いのかしら。




 とりあえず色々あったけれど、セリアとエルンストが婚約ということは執事のテオさんは失恋したわけでして――――



「リリス様ようこそいらっしゃいました。お嬢様とセリアはお庭で待っております」

「こんにちはテオさん、また会えましたね。これ、新商品なんで使ってみてください。後日感想を聞かせてくれませんか?」


「宜しいのですか?ありがたく受け取らせていただきます。感想はどのようにお伝えすれば……」

「これはまだ未発表の商品なので二人きりで聞きたいので、休日にカフェの個室で直接聞かせてください」

「かしこまりました」



 エミーリアとセリアとお茶会を口実に屋敷に遊びに行き、テオさんにアタックを開始した。ふふふ、テオさんと二人きりのチャンスもゲット!若いメイドたちも狙っているようだから、控えめNGでどんどん攻めるわ!



 平民同士だから個室に二人っきりでも良いのよね!




 前世は事故に巻き込まれて死んで未練もたくさんあったけれど、今はとっても幸せ。

 未だにシナリオ強制力が働き、セリアが王女セシリアとして国外に連れていかれないかが心配だけれど……って今のなし!フラグぽくなっちゃう。

 頭の中から悪い予感を追い出し、部屋にはいると大切な友達が待っていた。



「リリスさん待ってたわ」

「リリちゃん、今日はねガトーショコラなんだよ」

「エミーリア様お待たせしました。セリちゃんはまたお菓子のことばかりね、ふふふ」


「セリアが申し訳ありません」

「テオさん、それがセリちゃんの良さです」

「ふっ、そうですね」


 テオさんの微笑みゲットォォー!尊い!この世界まるごと写せるスクショ機能があれば良いのに。今ある大型静止画撮影マシーンを改造して無音カメラでも開発しようかしら。



 私は構想を膨らませながらお茶会の席についた。そしてガトーショコラを口にしながら、この世界に転生させてくれた神に感謝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ