表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/71

33.5 学園(見守り隊)

 やぁ久しぶり!セリちゃん見守り隊のジャンです。また、話を聞いて欲しい。少し長いが付き合ってくださいな。



 見守り隊が結成されて、俺たちはセリアさんをよく観察するようになった。

 今までさほど彼女に興味を持っていなかったため気づかなかったのだが、綺麗で美人なのだ。中性的な顔立ちで冷たい印象があるものの漆黒で深みのある瞳に吸い込まれそうだ。長めの前髪で隠されてるのが勿体ない。


 ツンツン姫改め、ツンデレ姫は熱弁する。


「身分を弁えて、謙虚に徹しつつ手厚いフォローをしてくれる。侍女なら最高の人ね。貴族だとしたら旦那様を立てる淑女のようで素晴らしいわ!さすが、この私が認めた平民ね!」

「今の恋愛騒動の令嬢も見習って欲しいわね」

「「わかるわー」」


 女子の意見が揃っており、見守り隊のメンバーの次期公爵の男も頷いていた。彼は家柄のせいか相当モテるのだが、例の子爵令嬢に触発された積極的な女の子が相手の立場を考えず、踏み込んでくるため困っているらしい。「何が恋愛騒動だ。平民の方がまともではないか」とお怒りだ。



 **********



 先日からセリアさんが寮の食堂で夕飯を食べるようになった。

 俺や他のセリちゃん見守り隊のメンバーも同じように注視していたが、セリアさんはテーブルマナーを習得済みだった。カトラリーの順番に、その使い方。常に背筋は伸びてるのに、優雅に食べている仕草は貴族とほぼ同じ。



 侍女の仕事もできて、貴族のマナーもできる……今までどんな教育を受けてきたのか、セリアさんはハイスペックだ。



 そんなセリアさんが微笑んだ。それはリリスさんに日頃の付き合いに「大好き」と添えて感謝の言葉を述べていた時のこと。表情が乏しいクールな人の甘い微笑みのギャップ攻撃の威力は最強だ。


 それを目撃した所為かセリアさんを紹介して欲しいと他クラスの友人に言われるようになった。

 話によると元々、他のクラスでは何でもできる平民がいると噂になっていた。寮の食堂で実物を見てみたら、大人しく綺麗な子で興味を持ったと言い出すではないか。遊びで権力を笠にされ彼女の平穏に手を出されては困る。


 だからと言って表だって庇うと平穏な彼女の立場を俺が壊すことになる。今だせる精一杯の睨みで友人にプレッシャーをかける。



「お前のためだ。彼女に興味本意で近づくと背後にいるファンから痛い目に合うぞ(セリちゃん見守り隊には次期公爵様がいるぞ。ツンデレ姫も敵に回すとヤバイぞ。お前のためだ、この気持ちよ届け)」

「なら俺もファンになろうかな」

「マジデスカ」



 届かなかった。知ってたさ、俺の顔面には迫力が無いことを……え?そうじゃない?

 ツンデレ姫、そんなに睨まないで。

 次期公爵様、そんな深いため息は傷つきます。

 リリスさん、見捨てないでください。



 **********



 パーティー当日、セリアさんは制服でいつもの髪型のまま参加しており、ドレス姿が見れなかったのは残念だった。


 しかしトラブルに見舞われた数名の令嬢を助け、自分の身なりより他者を優先した彼女らしさに、見守り隊一同は誇らしくなった。



 ラストダンスでは、お礼にと例の子爵令嬢の被害にあった男爵令嬢の兄「氷の微笑み」で有名な麗しのルイス先輩にダンスを誘われ、戸惑いつつ制服のまま見事に踊りきっていた。


 ダンスまで習得済みとは流石ですセリアさん!と感心して見つめていたら、ルイス様からは「手を出すな」という凍りつきそうなオーラが見え背筋が凍る。セリアさんは足元に集中していて気づいていなかった。



 見守り隊としてルイス先輩はどうなんだって?リリスさんによると彼は見守り隊の相談役で、絶対的な味方で、ラスボス(?)だそうだ。

 何それ……よくわからないけど怖い。

 俺は追求をやめた。



 **********



 連休が終わると見守り隊リーダーのリリスさんより通達がでた。

 途中退席しても詮索しないことを条件に、ランチのお誘いが解禁され、セリアさんが昼の食堂デビューを果たした。



 しかし、舞い上がることは出来ない。彼女に好意をもつ男子が同席しようと連日近くに来るのだ。

 ルイス先輩の牽制のお陰か、冷やかしは今のところ来ていないのが救いだろう。いや、本気だから厄介なのかもしれない。



 商会の息子や男爵家令息に釣り合う令嬢たちは花畑状態か既に婚約者がいたため、お近づきにはなれない。そこで平民でもそこらへんの令嬢より品行方正なセリアさんが優良物件になってしまったようだ。


 彼女のハイスペックぶりに一部では「他国の令嬢がお忍びで留学してる説」も浮上しているほどだ。



 しかしセリアさんは彼らの本気の気持ちに気付いていない。どこで覚えたのか避けるときの言葉に掴み所がなく、角が立たないようお誘いを断り続けている。


「先日僕の会社でカフェをオープンさせたんだ。是非セリアさんを招待したいんだけど、二人で一緒に……」

「カフェの宣伝であれば、二人でと言わず他の方も誘った方が効果的ですよ。それはもう一日貸しきる規模でパァっと大人数で楽しく」

「あ……うん、そうだね。人数が多い方が良いか」

「はい!カフェの宣伝頑張って下さい」



 金持ちの商家の息子の誘いもこんな感じでスルーだ。

 それを夜空の騎士エルンスト様が鋭い視線でセリアさんを見つめている。騎士候補生の中で彼女の筋トレアドバイスは好評だ。もしや遂に彼までもが筋トレ相談のタイミングを狙っているのか?


 セリアさんの注目度の上昇が止まらない。

 我々は見守り隊メンバーを増強し今日もセリアさんを見守るのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ