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11 屋敷(1年目)

 翌日、私は使用人のシーツを洗い、干していた。

 実は既にニーナさんから認められ、他の人のメイド服やシーツを任せてもらえるようになったのだ!まだ狭いけれど、掃除の担当エリアももらっている。やればできる子なのだ!


 しかし、途中でスザンナさんから呼び出される。



「旦那様からお話があります。私も同席するわ。ニーナも来なさい」

「「承知しました」」



 お嬢様改造計画の事を怒られるのだろうか……今思えば主人に対して失礼極まりない。ニーナさんと顔を合わせ、二人で覚悟を決めた。

 案内されたのはエミーリア様の勉強部屋で、旦那様、奥様、エミーリア様、ダニエルさんの他に家庭教師の先生もいた。


「よく来てくれたね、早速だがセリアに新しい仕事を簡潔に伝えるよ」

「はい」


 どうやら新しい辞令らしいのだが、先生の同席が不思議だ。


「明日よりセリアには、リアの専属メイドになってもらう。ついでに、共に先生の授業を受けて欲しい。先生の了承は得ているし、テオに聞いたところ文字の読み書きも習得し、足し算引き算に関してはテオよりできると聞いている。きっと何とかなるよ」

「!?」


「そして、ニーナはスザンナの補助をしつつセリアに侍女教育を施して欲しい。君は優秀なメイドで、侍女もできるレベルだと思っているよ」

「かしこまりました。ご期待に添えるよう教育いたします」


 私が動揺している間に、ニーナさんが承諾してしまう。なんたる裏切り。


「あの、リア様と勉強とは具体的には何を?」

「全てだよ。国語に、算数に、そのうち数学に、社会、異国語、ダンス、マナー、音楽など淑女教育の全てだ」

「――――っ」


 ぜ……んぶだと……!?やはり、これは改造計画の罰なんだろうか。罰なのに貴族の高水準の教育が受けれるのは、罰になるのか?

 あたふたしているとエミーリア様が笑った。


「ふふふ、セリアでも動揺することがあるのね。私がお父様にお願いしたのよ」

「な、何をですか?」

「先日セリアは一緒に頑張ろうと言ってくれたじゃない?だから巻き込んじゃったわ、えへ♪」



 か、可愛いー!……じゃない!とんだ小悪魔め!許すけどね!



「というのは冗談で、私ひとりでは変わる自信がないの。嫌いな勉強で心が折れそうなときは支えて欲しい。使用人に酷いことをしそうになったら止めて欲しいの。私は変わりたいの!」

「…………リア様、素晴らしいです。わかりました!」

「ええ!お勉強、頑張りましょう!侍女教育も頑張ってね」



 私とエミーリア様は堅い握手を交わした。

 一瞬、侍女教育の事を忘れていた。あれ?私だけやること増えてないか?侍女とは何かを、スザンナさんに聞いてみた。



「当家の侍女とは主の身の回りの世話をするメイドです。通常のメイドの仕事の他にもドレスの選定、へアセット、化粧、仕立てレベルの裁縫が求められるのです。主がいかに輝けるかは侍女にかかっていると言っても過言ではないのですよ」


 侍女って凄い。メイド長と侍女を兼任しているスザンナさんの偉大さが改めて分かる。そしてニーナさんも侍女教育を任せられるほどの有能さだとは、まだ16歳なのに凄い。

 大変なのは分かるが、習得できれば私自らエミーリア様をプロデュースできるのか!今から妄想が止まらない。私が妄想で言葉が出ないのを、重圧で無言になったと勘違いしたのか、シーラ様がフォローしてくれる。



「セリア、すぐに立派な侍女になって欲しいわけではないのよ。淑女教育もあって大変だと思うから、ひとりではなくニーナを頼りながら学んで欲しいの」

「あ、はい」


 危ない、意識が飛んでいた。ニーナさんと一緒なら安心だ。それでもやることは多い。


「あの、侍女は仕事としてずっと続けるのはわかりますが、淑女教育はいつまでなんでしょうか?」



 私の疑問に旦那様が答えてくれる。



「リアが淑女教育を終える。またはセリアが先生の卒業テストで合格点をとれば終わりにしよう。15歳まで学ぶ範囲が基準で良いかな?先生」

「宜しいでしょう。合格した教科から随時修了とします」

「分かりました」


 よし!エミーリア様には悪いけど、一夜漬けでも何でも良いからさっさと淑女教育を終わらせよう。私は色々なことを同時にできるほど有能ではない。1教科ずつ狙って修了し、将来の仕事のために侍女教育に専念したい。



「では一週間後から始めます。その間にシフトの調整を行い、ニーナは引き継ぎをしてください」

「承知しました」



 礼をしてニーナさんと私は部屋を出た。

 気合が入り、いつもより凛とした雰囲気に変わったニーナさんに、私は頭を下げた。



「ニーナさん、宜しくお願いします」

「もちろんです!これは私の挽回のチャンスでもあります」

「挽回、ですか?」

「はい。昨年スザンナさんがメイド長になる際に、私は代わりの侍女になりました。しかし、お嬢様に対応しきれず……次こそは成し遂げたいのです。頼みましたよ、セリア」

「はい。頑張りましょう」


 こうして私たちの絆は強くなった。



 **********



「ねぇ、セリア?算数は分かるけど、数学って将来使うことってあると思う?」

「直接はないかもしれません。でも数学の計算で脳が鍛えられ、頭の回転が早くなり、トラブルが起きても冷静に考えられるようになるはずです」

「むぅ、なるほどね」



 エミーリア様は勉強が嫌になってくると、こういった事を聞いてくる。私も前世ではよく思っていたから、事前に予測して返事を考えておいた。先生を見ると頷いてくれているから、悪くはないらしい。



 侍女教育は今は優しめだ。ニーナさんに『さっさと淑女教育を終わらしてから、侍女教育に専念する』作戦を伝えたので協力してくれている。お陰で勉強に集中できて順調に進んでいる。

 ニーナさんの華麗なるへアセットの技を早く教わりたいものだ。




 そうして約一年後。ダンス、マナー、音楽の実技の授業を残し、私は全ての座学を修了させたのだ。


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