さるとり合戦
「やれやれ、早いもんで、今年ももう終わりか。晴れて、俺も干支から解放ってワケだ」
「いやいや、おたくは肩の荷が下りてホッとしてるかもしれませんけどね、ワタシはこれからなんですよ。緊張しちゃって大変、大変。なんでご先祖さまは干支なんかの為に、競争なんてしたんですかねぇ」
「まぁまぁ、酉よ。そんなこと言うな。考えてみろよ。猫のヤローなんか、うっかり寝過ごしたせいで、干支に入りたくても入れなかったんだぞ?そういうヤツらもいるんだから」
「そうですけどねぇ。ワタシらが一年を司るなんて、やっぱり荷が重いじゃありませんか」
「そんなに重く考えるもんじゃないぞ。人間、干支なんてそんな気にしてないんだよ。たかが、年賀状にイラストとしてのっけるか、正月飾りにちょっと付けとくくらいなもんだ。三月にもなりゃ、多くの人が干支なんて気にしなくなるだろうよ。現に作者なんか、さっき、今年の干支ってなんだっけ?ってググってたんだぞ?ヒデー話だ、全く」
「そう言うもんなんですかねぇ」
「しっかし、俺は次がお前さんで良かったよ。寅なんか卯のヤツに引き継ぐ時に、めちゃくちゃ怯えられて引き継ぎどころじゃなかった、って話だぜ」
「おまけに寅さんは、一つ前が牛さんですからねぇ。聞きました?引き継ぎの時、牛さん、ほとんど寝てて、引き継ぎという引き継ぎが無かったらしいですよ?」
「…本当に寅のヤツ、難儀なヤローだな…。今度飲みにでも誘ってみるか…」
「申さんは、なんだかんだ、ちゃんと引き継ぎして下さいますもんねぇ」
「まぁ、引き継ぎされたからどうなる、ってもんでもないけどな」
「いやいや、やっぱり心持ちが変わりますよ。前の年の干支が一年何を考えてたのか、しっかり聞ける、っていうのは」
「何を考えてたか、って言われても……。せいぜい、メンドくさいことが起こりませんよーに、ってくらいだぞ?あとは、好きなアイドルグループが解散しませんように、とか」
「…結構、適当なんですね」
「いやいや、好きなアイドルグループが解散しない、ってのは結構重要だぞ?もし羊のヤローが今年の干支であってみろ。某国民的アイドルグループの解散で泣き崩れて、彼らのラストステージ終わったら干支の役目放棄して脱走してるぞ?干支が引き継ぎ前に脱走なんて前代未聞。大問題だぞ?」
「結局彼ら、年末の歌番組辞退しましたもんねぇ…」
「だろ?だから、好きなアイドルグループの存続を祈るのは結構大事なことなんだよ」
「でも、本当にそんなのでいいんですか?なんか、適当過ぎじゃありません?」
「いいんだよ。俺らの仕事は、一年間、干支としての役目を全うすることなんだから」
「でも、やっぱりいい年になって欲しいじゃありませんか」
「俺たちが頑張ってどうにかなるもんでもないだろ?結果、人間たちがどう頑張るかなんだよ。俺たちはせいぜい、今年は反省材料にことキャキャない年でした。来年は、国の元気をトリ返すぞ!みたいに人間が言ってるのを生暖かい目で見てりゃあいいんだよ」
「申さん、申さん。それ、通天閣に怒られませんか?大丈夫ですか?新年早々、作者諸共、このサイトから消されてたりしませんか?」
「そんときゃそんときだ。作者が悪い。完全に自業自得。自然淘汰。年末大掃除がてらに丁度いい。だいたい、お前さんはビクビクしすぎなんだよ。干支なんだから、もっとどっしり構えとかにゃ」
「…そうですね。ワタシが一年の顔になるんですもんね。まだまだ不安はありますが、頑張らなくてはいけませんもんね」
「そうそう!その意気だ!なぁに、最初は不安でも、やってれば案外なんとかなるモンキー」
「……」
「……」
「……」
「……。さて、お役目御免の古い干支は、ここらで大人しくサルとするかね。頑張れよ、酉」
「ええ、2017年が飛躍の年になるように、ワタシ、微力ながら頑張らせていただきますよ。この大空を飛んでみせますとも!」
「…いやいや、ちょっと待て。お前さん、酉といってもニワトリだから、空、飛べなくね?」
はちです。
もう今年も終わるので干支の話を、と思い書きました。
誤字、脱字等ありましたらご指摘頂けるとありがたいです。
お読みくださりありがとうございました。
皆様に、最大級の感謝を込めて。
はち