眼鏡娘、白狼と話す。
絶体絶命です。
私の目の前には、白く滑らかな体毛を持つ私の倍くらいの大きさの少々ファンタジーな狼。そしてその視線の先には私……ではなく先程見つけた川。
綺麗な川があれば、何らかの動物がいることくらい予想できたでしょうに、過去の私。まあ流石の私でも少しは焦っていたのかもしれませんね。
『_____何故ここにいる、アイテの子よ。』
……テレパシーか何かでしょうか。重苦しい威圧感のある声が脳内に響きました。アイテ_____とは、誰でしょう。それが顔に出ていたのか、白狼は怪訝そうな顔をしました。
『アイテ、とはヒトを創った神のことだ、要はヒトの子、という意味だ。……だが、ヒトの子ならばわかると思うのだが。』
これは……どういうことでしょう。私はてっきりここは地球のどこかの森林だと思っていたのですが、_____まあ、喋る狼がいる時点でおかしいとは思っていたのですが_____話から察するとここは________地球では、ないのかもしれません。
「あの、日本という国は?」
『ニホン?何処だ、そこは。』
これは、『やばい』かもしれません。
どんどんと表情が暗くなる私。すると、白狼は近づいてきました。思わず身構えてしまいます。
『お前は、何者だ。私はこの森の主、ヴァンフだ。』
「山河焔です。えーと、ここどこですか?最寄りの街とか国は?」
『ここは、【終焉の森】だ。最寄り、というかここら辺の土地の大部分が森だが……一番近いのは、エンテストだな。』
嗚呼、決定的ですね。国は全部覚えてますけど、エンテストなんて国聞いたことがありません。
ここは、地球ではないのでしょう。
>>>>>>>>>>
いつものように身体を清めようと、聖川に行くと、そこには先客がいた。
さして珍しくない赤毛に______奇妙な飾りのようなもの。そう、人間________アイテの子だった。【終焉の森】と呼ばれるこの森に人間が来ることはそうそうない。
胸の高鳴りを感じながら、私はアイテの子に話しかけた。