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第2話 廃墟 2


廃墟から亮に置き去りにされてイライラしながら帰ってきた次の日優也はまだかまだかっと亮がやってくるのを待っていた。


もちろん、置き去りにされたことをきっつく叱るためだ。

しかし、いつまでたっても亮はやって来ない。


(今日も遅刻かよ?)


昨日の今日で遅刻なんて……担任の田中はどれくらい怒るんだろうか。

もしかしたらニ、三時間ではすまないかもしれない。

亮のことを怒っていた優也だが、田中に長いこと説教をくらう亮を想像すると少し同情してしまう。


しかし、そんな想像は現実のものにならなかった。その日から、亮は学校に来なくなったのだから。


(……どうしたんだろう……風邪とかか?)


優也は教壇で今の授業担当の先生が話をしているのを見ながら、頭の中では亮のことばかり考えていた。

もう、亮が学校に来なくなって3日はたつ。

いつもなら、優也はメールなどで亮に様子を聞くのだが、置き去りにされたことを怒っていたため連絡なんてしなかった。


優也は教師の目を盗んで携帯を取り出した。そして、メール画面を開くと止まる。

しばらくなんて打とうか悩み。少し眉を寄せるとゆっくり指を動かし……送信ボタンを押した。


メールを送ったのはいいが、いつまでたっても返事が返ってこない。


(亮、本当にどうしちまったんだ?)


優也は午前中の授業が終わるチャイムを聞くと溜め息をつき鞄を持ち上げた。とりあえず、学校を自主早退して亮の家に行くようだ。


ちょうど昼休みなので、優也が鞄を持って歩いててもそう変だとは思われてない。


優也は、学校を出ると亮の家へと向かった。

亮の家は公園の近くだ。


優也は、公園を通りすぎると亮の家の青い屋根が見え歩くスピードを速めた。


家の前につくと門を開けインターホンを鳴らした。

ピンポーンっと機械音が辺りに響く。


インターホンを鳴らしてすぐに家の中からドタバタとけたたましい足音が聞こえた。

そして、バターンと勢い良く扉が開く。

開けたのは亮の母親である。亮の母親は、亮のようにいつもニコニコと優しげに笑っている。


しかし、今は明るかった面影が消えていた。髪はボサボサで顔はやつれ、寝てないのか目にはうっすらクマが出来ている。


「亮ッ!!あなたいったいどこい……あっ」


優也の顔を見ると亮の母親の顔は期待から悲しさそして絶望に変わる。

どうやら、窓から見えた十条高校の制服を見て最愛の息子と勘違いしたようだった。


優也は目をパチクリとさせた。亮の母親の様子を見るからに亮がしばらく家に帰ってないように伺える。


「あ、あの……おばさん。亮は……」


優也はそれでも信じたくなくて亮について聞いてみた。

すると、亮の母親はかなしそうに目を伏せる。


「あの子、帰ってきてないの」


優也は眉を寄せた。確かにそうかもと思ったのだが、当たってほしくなかった。





「亮、いったいどこに行ったんだよ」


悲しみにくれる亮の母親と別れてトボトボと歩く優也。

空を見上げてまるで天に問いかけるように小さく呟いた。


亮の母親の話では4日前に学校に行ってから帰ってきてないようだ。


優也は、グッと携帯を握る。


こんなことになるならさっさと連絡しとけば良かった。いつまでも置き去りのこと怒ってる場合じゃなかった。

優也は自分のしたことを後悔し、顔を俯かせると唇をギュッと噛み締めた。

そして、ハッと何かに気付いたように顔を上げる。


(置き去り……そうだ!!4日前、俺たちはあの廃墟にいた。その後、亮は消え……だったらあそこに)


優也はまずコンビニに行き、懐中電灯と食べ物、飲み物、他にも必要なものを買うと裏山へと走った。


優也は大急ぎで獣道を走り抜けた。

走り抜けたせいか木々で所々身体を切ってしまい傷だらけになった。


川も急いで飛び越えた。

あまりにも急いでいたせいか足を滑らせ胸元まで川に浸かりびしょびしょになった。


崖っぷちは流石に慎重に歩いた。落ちたら怪我どころではすまない。


優也が廃墟にたどり着いた時には何が起きたのかと言ったくらいボロボロになっていた。


優也は、廃墟につくと勢い良くドアを開けた。

開けると四日前と同じように埃と荒れた屋敷内の様子が目に映る。

優也は懐中電灯を取り出すと念入りに調べ始める。


一階を調べ終わり、今度は二階だ。


二階にあがると優也は目を細めた。

4日前に亮を探して歩いた時と何かが違うように感じたのだ。


優也は窓から差し込む太陽の光と懐中電灯で照らしながら二階の廊下を見つめる。


「あっ」


優也は違和感の正体に気付き声を上げる。一番奥のドアだ。

優也はあの時あのドアを開けてない。

窓の外は暗かったし、懐中電灯ではなく携帯の明かりを頼りに探していたので気付かなかったのだろう。


ドアは何故かドアノブからすべて真っ黒に統一されており、暗いところでは気付きそうにない。


優也は真っ黒なドアへと駆け寄った。あの時、亮はこの部屋にいたのかもしれない。


実際ドアノブを懐中電灯で照らすと埃が取れており、最近開けられたことが分かる。


優也はゆっくりとドアノブに手を触れた。この部屋に入ったせいで亮が居なくなったのなら……この部屋は危険なのかもしれない。


ゆっくりとドアノブを回しガチャンと音を立てゆっくりとドアを開く。

そして、開いたドアの隙間から部屋の中を覗く、暗くてよく見えない。


優也は勇気を振り絞るとドアを思い切り開け閉まらないようにストッパーをかけると部屋の中を懐中電灯で照らした。


「な、なんだ?この部屋……」


部屋の中は一言でいうと異様だった。

壁には暗幕がびっしりと貼られており、床には白いチョークか何かで円のようなものが描かれているように見える。


優也は部屋の異様さに眉を寄せるも懐中電灯で部屋の中を照らした。そして部屋の隅を照らした時、青い何かが懐中電灯の光に反射したのを見つける。

優也は部屋の外から目を細め、その青い何かを照らし続ける。



「あれは亮の携帯のストラップッ!!」


青く反射していたのは亮の携帯のストラップだった。

優也はそのストラップを拾おうと部屋に入り描かれた円に足を踏み入れた。


優也が足を踏み入れると突然、円がキラキラと光り輝きだす。


「ッ!?」


優也は驚き円から離れようとするも足がピクリとも動かない。


(なんだよ!!これ、どうなって)


優也は焦るも、光はだんだんと強くなっていく。

優也はあまりの光の眩しさにギュッと目を閉じた。


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