幸せなセリーヌ
ある山の麓の町に海で泳ぐのがとっても大好きな男がいました。
彼は名をセリーヌと言い、町のペンキ屋の息子で両親と仲良く暮らしていました。
町の人とも仲の良いセリーヌは友達もいっぱいいて幸せな毎日を送っていました。そんなセリーヌには一つの趣味がありました。それは、海で泳ぐことでした。
彼は毎日毎日山を越えて海に行きました。服もズボンも靴下も靴も帽子もパンツも何もかも放り投げて海で泳いでいました。
別に魚を食べたい、貝を食べたい、海草を食べたいという訳でもなくむしろ彼の家は裕福だったのでただただ泳ぐだけでした。泳いでいるときのセリーヌはそれはもう天国にいるかのような笑顔で大きく口を開けて泳ぎます。だから、水が口から鼻から入ってしまい時々溺れることもあります。
毎日セリーヌは泳ぎます。曇りの日も、雨の日も、霧の日も、雷の日も、嵐が来ようと雹が降ろうと、海が凍っていた日は氷を砕いて泳ぐほど彼は海で泳ぐことが好きだったのです。
そんな彼にある日友人が聞きました。
「なあセリーヌ。君はなぜそんなに海で泳ぐことが好きなんだい?」
彼は答えます。
「それはだね。海が青くて綺麗で大きいからだよ」
友人は聞きました。
「そうだったのか。君は海が青くて綺麗で大きいから毎日泳ぐんだね」
セリーヌは答えました。
「ああ。僕は海が青くて綺麗で大きいから毎日泳ぐのさ」
そう言ってセリーヌは海に泳ぎに行きました。
ある時友人はセリーヌをからかってやろうと変な質問をしました。
「なあセリーヌ。君は毎日山を越えて海に行くけどそれはちょっと面倒じゃないかい?」
セリーヌは困ったように答えました。
「そうだけど、僕は毎日青くて綺麗で大きな海で泳ぎたいんだよ」
友人は手をポンと打ち提案しました。
「セリーヌ、君に良いことを教えてあげよう。これは君がどこでも青くて綺麗で大きな場所で泳ぐことが出来ることだよ」
セリーヌはびっくりして目を大きくさせて答えました。
「何だって!本当にそんな夢の様なことがあるのかい!?」
友人は少し笑いながら言いました。
「本当だとも。まず君の家に行って青いペンキと筆をいっぱい持ってくるんだ」
セリーヌはすぐさま駆け出して、リヤカーに青いペンキと筆をいっぱい積んできました。
「それで一体何をすればいいんだい?」
セリーヌは興奮して聞きました。
「やることは一つだよ。この青いペンキでこの大きな空を全部青い色にぬってしまえばいいんだよ!」
友人は手を胸の前で広げ大きな声で言いました。
「なるほど!それは気づかなかったよ!よし、早速塗ってしまおう!」
「頑張るんだよ、セリーヌ。おっと、ペンキが剥げてきたら定期的に塗るんだよ。そうしないと、雲がペンキの下から出てきて泳げなくなっちゃうからね」
セリーヌはもう作業に移っていました。青いペンキで空を綺麗に塗っていきます。
「やれやれ。本当に幸せな男だね、君は」
今もどこかでセリーヌは空を青いペンキで塗っていることでしょう。
初投稿です
読んで頂ければ幸いです^^;