9話;神様っていつもこう…
また静かな時間が過ぎた。
しかしそれもすぐに終わった、慌ててカジキが何かを思い出したように立ち上がる。
「の、のんびりしてる暇無いじゃん!!!!
君の仲間がくるんじゃん!!!!!」
あたふたと彼が私に立ち上がるよう指示した。
「え〜、急いで戻って皆に伝えて〜、色々準備して〜って、仲間に引き込むんだったか、いやいや待てよ、そういえば勝手に外に出てきちゃったからそれの〜…、いやダメだダメだ、先ず行動しなくちゃ!!!!!!!」
1人で物凄い勢いで喋り、そして私の手をとった。
「走れる!?」
「…‥ん。」
《*》
No.8732は部屋で1人、時計を睨みつけていた。
「…‥後30分‥。」
着々と近づいてくる任務開始時間。
彼女は任務へ行く4人を、空間転移能力を使用しキマへと運ぶ事…、そして直接サミレナに接触する事が仕事である。
そもそも空間転移とは、自分の体内にあるカプチを排出し目標を包み、カプチに命令を出して高速で運ばせる能力である。
空間転移と大げさなネーミングをしているが、これはカプチが光の反射を利用し、体の色を変化させて消えたように見せているためだ、理由は不明である。
秒針は止まることなく問答無用で進んでいく。
「…じかんよとまれ〜…‥。」
しかし止まらない。
深くため息をついてまた秒針を追いかける。
「‥なに馬鹿やってんの?」
驚いて振り向いた先には大して年齢差の無い男の子がドアから覗いていた。
さっきつぶやいた言葉を聞かれたのか、なんだか恥ずかしくなった。
「お前らしくねぇな、準備しとけってよ。」
「あ、は‥はい!!
分かってますよ!!!」
男の子はそのままドアを閉めた。
…神様って何時もこう‥。
世の中に、私達に何度も何度も試練を与えて、ご褒美はほんの少し。
しかも突然で…。
「たまには…、ご褒美が多くてもいいんじゃないですか‥?」
時計に向かってつぶやいた‥。