7;ありがとう
いやいや くさいくさい(内容が
「‥…よし、大丈夫だ!!」
カジキと私はこそこそしながらあの建物から抜け出して、今は近くの街中を歩いている。
「いや、外出は禁止になってるからさぁ。
こうやって隠れながらじゃないと…」
「…‥何で…禁止‥なの?」
少年は固まる。
「あ、いや‥そのぉ〜‥、まぁちょっとドジって‥ね。」
そしてカジキはこの件から離れようとする様に、足を進めた。
「さて、どこ行こっか?」
カジキはいつもの元気な声でたずねた。
「‥あ…、その‥イリアが…言ってた…‥‥その…」
「イリア?
…‥‥‥あぁ、デカい木がある広いとこ!?」
私はウンウンとうなずいた。
「よし、任せろ!!」
そう言ってカジキは歩き出す。
私は小走りで彼に近づき、その腕にしがみついた。
少年が慌てて何か言ってるようだが、今の私の耳には入らなかった。
外は明るくて、風があって、空があって、私が大好きな空間。
けれど、まだ恐くなる時がある…。
でも…、何でだろうか…?
カジキといると、…その恐怖心も無くなっている…。
「はい。」
ハッとカジキの言葉で自分の思考から引きはがされた。
彼の手には赤く丸い物がのっていた。
私はそれを受け取り、マジマジと眺めてからカジキを見た。
「ん?
あぁ、これ? リンゴって言うんだよ。」
そう言ってカジキは自分の手にしているリンゴにかぶりつく。
私ももう一度この赤い物体を見つめ、そしてそれを口に運んだ。
リンゴを食べながら街を歩いていると、大きな木が目に入った。
「よし、着いた着いた!!」
カジキの言葉の後に角を曲がると、目の前に広い草原と大きな木が視界に広がった。
「ここでしょ?
行ってみたかった場所は。」
カジキの言葉はギリギリ私の耳に入った。
私は今何よりもこの風景に見とれていた。
空は雲一つ無く、日は何に遮断されることなく照らし、風は自由に空を泳いでいた。
私は、この景色に吸い込まれる様に足を進めた。
途中から走っていた。
今はこの草原には誰もおらず、私はこの大好きな空間を楽しんだ。
しかし急に視界が変わった、…こけた。
「っえぇ!!!
ちょ、ちょっと大丈夫か!!サミレナ!!」
カジキが慌てて私の元へ駆け寄ってくれたが、彼も視点が一気に下がった、彼も転んだのだ。
その光景を見て、私の口元が緩んだ。
体を半回転させて空を眺めた。
目の前に広がるのはただ青い真っ青な空の海、右手を挙げ空をつかんだ。
もちろん空は手に入らない。
ふと気づいた、先程までリンゴを手にしていたことを。
「…カジキ‥」
私は少年の名を呼んだ。
少年は体を起こして、体についた葉を落としていた。
「‥私…りんごもらった‥…」
「…うん、あげたよ。」
間があいた、風で葉がこすれる音が耳に入る。
「…‥もらったら…何か言う…、‥‥私…その言葉…‥知らない。」
カジキは微笑んだ。
そしてカジキは口を開く。
「…『ありがとう』‥って言うんだよ。」
カジキは立ち上がって私の顔をのぞき込んで言った。
「‥…あり‥がとう…‥?」
カジキは笑って応えてくれた。