5話;後一週間
話数は進むけど何とも言えないよね…、やっぱり…。
朝、体を何かが温める。
目をゆっくり開けると 空に見える 輝くものの光が身を包んでいた…。
ベランダから見える外の景色は すっかり私をとりこにした。
部屋の中から持ってきた椅子に座り、また私は小鳥の歌を楽しんでいた。
すると部屋の中から カタリ と音が聞こえた、中を見ると男の子が寝惚けながら歩く、そしてこっちを見て一言。
「…‥おはよ‥!」
「…‥‥ぅん…。」
彼はそのまま洗面場に向かった。
昨日の事を空を見ながら思い返してみた。
『戻りたくないなら連れてきちゃえばいい!!』
カジキが出してくれた結論である、…簡単な事じゃない、けれど彼の自信に溢れた根拠の無い言葉は、『きっとできる』、そう思わしてくれた。
「サミレナ、ちょっと…」
後ろからカジキが私を呼んだ。
しかし彼は私服姿ではなく、キチッとしたキマの軍服を身にまとっていた。
「…‥えっとぉ〜‥いや、やっぱいいや!!
ちょっと出かけてくるから。
…‥1人で…大丈夫?」
昨日自分の部屋に戻ったら私が泣いていたからだろうか、一声かけてくれた。
一応
「大丈夫」
、と口にはしたがそれは嘘であるのは事実なのだ。
彼が部屋からいなくなるとなんだか寂しくなった。
少年はキチッとした格好である部屋に入った。
「‥失礼します…。」
部屋には沢山の本と資料、大きな机にコンピューター、そして勲章をつけた30代後半ぐらいの男性がいた。
「カジキ君…だったね、どうだい?
『アレ』は?」
少年はその男の言葉が妙に腹に立つ。
「…‥カプチ体‥、サミレナですが、単に体をつくる物が違うだけで、後は人と何ら変わらないようですが?」
「ほぅ…、しかしアレは調査によると実験体なのだよ、普通とは違うモノを必ずもっているのだ。」
少年は無言立っている、拳には力がこもる。
「いいな?
後一週間だ、一週間で見つけられないならば解剖調査に入る。」
「…‥分かっております‥。」
私はあのベランダでカジキのオススメの食べ物を口に入れていた。
私は車の中で『No.3307』ではなくなった、私はあの日から『サミレナ』、という名前を持つ人間になれたと思っている。
しかし 私のともだちはまだ私を『No.3307』と思っているのだ。
『実験体 万能戦闘型カプチ体 No.3307』
私はこの文字を捨てたのだ。
だが、これは捨てたつもりなのだ。
実際はちっぽけな砂の生物から生まれたヒトならざるヒト、人間にはいくら頑張ってもあがこうもなれはしない。
「カ〜プチちゃん!!」
突然部屋から女性の声が耳に入り、驚いてそちらを向いた。
そこにはセミロングの茶髪、服装は下だけキマの軍服のズボンを履いた女性がいた。
「…‥誰…?」
「あぁ、私?
私はイリア、ここの通信・情報伝達役。
暇だから遊びに来ちゃった!!」
そう言って彼女は笑ってみせる。
そして彼女も部屋の椅子を1つベランダに置き、私の横に座った。
「…‥。」
「…ここは好き?」
イリアが訪ねてきた。
「…‥ん‥。」
「何で?」
簡単に返した私に理由まで訪ねてきた。
「‥え…、‥あ、…‥明るい‥し、‥空が…‥空があるから…‥。」
「そお、私も好きだよここ。
‥そうだ!!
今度カジキにさぁ、連れて行ってもらいなよ!!」
どこに? 聞く間も無かった。
「おっきな木がある草原があるんだよ、‥まぁ他には何もないんだけど、気持ち良いから!!」
彼女は笑いながら私の肩をパンパン、と軽くたたく。
イリア…
この人を見る度に、笑っている姿を見るとあの人が頭に浮かぶ…
No.7116‥
あなたも…
あなたも…空が好きだったよね…‥