4話;カジキ
なんとも言えない感じです…。
「ただいまぁ〜、いやぁ〜サイレンが誤報でさぁ〜点検やらされて…‥ん?」
少年は自分の部屋にかえってきて、私の変化に気づいた。
私は目から何かが流れてるのに気づいた。
カジキは私の前にきて目線を合わせた。
「どうしたの?」
「…‥…、‥カジ‥キ…、わたしね…ともだち‥おいてきて…‥自分だけ、‥ここにきて…、‥いたくなかったから、…とも、だち…」
一気に目から涙が溢れた。
「…ともだちが、…今ね‥…きてね…、帰ろっ…ってね…」
言葉の途中急に頭が揺れた、カジキが指でおでこをつついたのだ。
頭が揺れたのに驚いて私はカジキを見た。
「正直にこたえな?」
彼と目が合った、彼はにっこりと笑ってくれた。
「あそこに戻りたい?」
私は首を横に振った。
「‥友達とは離れたくない?」
「…‥一緒に‥いたい…。」
少年は立ち上がった。
「じゃあ、友達連れてきちゃおうよ!!」
「‥…できるの…?」
少し止まった。
「な、なんとかなるって!!
な!!」
根拠の無い言葉だったけれど、私はなんだか嬉しかった。
人間は恐いだけじゃなかった。
私の前で笑顔でいるこの人は、‥とても…温かかった…。
「…今日…‥、この部屋に‥いていい…‥?」
※
日が大分落ちた時間、ここ『レール』のある一室では…。
誰もいない部屋に突然小さな緑色の竜巻が起きた。
竜巻は球になり、パッと光るとそこには 女の子が立っていた。
「…っふぅ‥。」
女の子は大きく1回ため息をついて部屋を出た。
薄暗い廊下を歩いき階段を降りる、そして数メートル歩くと大きな扉が見えた。
扉を開けて中に入る、そこには中年の男性が椅子に腰掛けていた。
「おぉ、帰ったか。
アレはどうした?」
おじさんは女の子に話しかけた。
「…『No.3307』ですが‥、戻りたくない、と。」
この言葉を聞いておじさんはため息をして返す。
「『No.8732』、貴様何か勘違いをしていないか?」
「…‥…、…【任務 『No.3307』の回収】…、‥分かっております!
しかし彼女にも自我を、ヒトと変わらない心を手にしたのです!!
これは彼女が選んだ道なんです!!」
「それが何だ!!?
いくら感情があったとしてもアレは人か?
人形だ、兵器だよ!!
」
その言葉は女の子にささった。
「…‥いいか?
明日、必ず取り返してこい‥。」
「…‥…はい‥。」
女の子は一度頭を下げてから部屋を出た。
そしてまた先ほどの道を戻り部屋に向かった。
すると部屋の前に誰かが立っていた。
「『No.8732』、彼女は…『No.3307』は?」
その青年は女の子に気づくと声をかけてきた。
「…帰りたく無い、と 言われてしまいました…‥。」
「…そうか‥。」
やはり、と 予想していた感じで返した。
「ボスは‥『No.3307』を物として考えています、やはり私はあの方を好きにはなれません。」
手に力がこもる。
「仕方ないさ、彼女は87%がカプチでつくられている‥。
俺達みたいに人間にカプチを組み込んだわけじゃないんだ。」
「‥しかし…、今の彼女は人間と変わらないのですよ?」
青年は何もこたえない。
「彼女は実験体ではありますが、カプチの補給が必要ないのです!!
ここにとどまらなくても生きていけるのですよ!!」
「…そうやってボスの命令に反していいのか?
君が犠牲になって彼女を助けるのか!!」
女の子は全く動じないで返した。
「私は死んでも構いません。」
※
いつもは寒い部屋だけど
触れ合う体の温もりが僕等をあたためた
寝息だけが聞こえて
たまに寝返りをするこの娘
寝言だろうか一言言った
「‥一人は…嫌…。」