2話;君はサミレナ
車は長く先の見えないくらいの道を走っていた。
風は気持ちいいほど吹き、私の髪をなびかせる。
私達はあの建物から出て、街を走り抜け、今この長い道を走っている。
先程まで後ろから追いかけてくる人達がいたが、今はもういない。
上を見ると空が広がっていた、真っ青なそらに真っ白に輝く太陽だけが見える。
何だか嬉しい気持ちでいっぱいだった。
口元が緩む。
「なぁ君さぁ、名前は?」
突然横に座る少年が話しかけてきた、驚いて慌てて少年の方を向いた。
「あ、僕はカジキって言うんだ。」
少年はにっこりと言う、そして続けて
「君は?」
と、訪ねた。
「…‥私は…No.‥3307…って、言われた‥。」
私はあの施設で言っていた私の呼び名を言った。
「…‥数字?」
カジキと名乗る少年は何やらムッとした顔になった。
「カプチ体に名前はいらないってことなんだろ‥。」
運転席から声がした。
「‥…カジキ、お前名前つけてやれよ。」
「えぇ!!!」
そして続けて話す運転手からの言葉にカジキは慌てた。
そして唸りながらうつむいた。
私もこの状況にどうしたらいいのか困る。
すると運転手から私に声がかかった。
「すまんな『姫さん』、これからあんたもいろいろ忙しくなっちまう。」
運転手の大人びた優しい声が私の耳に届く。
「…空が‥‥見たかったから…。」
言葉を返すと
「そうかい。」
と、優しく返してくれた。
「『サミレナ』!!」
カジキが突然叫んだ、もちろん私と運転手の会話はそこで途切れた。
「あ、君の名前ね。
サミレナ、滅語なんだけど創造って意味だったかな?」
「…‥そうぞう‥?」
意味が分からなかった。
「そう、つくるって事。
外の世界に出れたんだよ、色んな物を見て、知って、そして自分の道をつくれるように、って。」
何か少年の顔は満足気に見える。
すると運転席から声が聞こえた。
「お前それ 3 3 0 7 を語呂合わせにして、たまたま滅語って気づいただけじゃないか…?」
少年は固まっていた。
車は真っ直ぐと先の見えない道を走り続けていた。
カジキがつけてくれた名前
「サミレナ」
が妙に気に入って、変更を断った。
車を走らせていると小さな建物が見えた。
そこに止めて、私とカジキは車をおりた。
「これに燃料いれてくるから食いもんでも買ってきな。」
運転手が言ってメモをカジキに手渡した。
「俺のはそれね。」
建物の中に入るとずいぶんと古い感じの店内が広がる。
カジキはカゴをとり、先ずあの運転手の注文した物を投げ入れていく。
「よし、サミレナは何がいい?」
運転手の物を入れ終わると私に訪ねてきた。
…名前で呼ばれたのが何だか嬉しい…。
しかしあの施設で口にしていたものはいつも同じで、味が無くて、栄養素だけが含まれていたゼリーの様な物…。
今周りに並ぶ物は何がなんだか分からない。
「ちなみにこれがオススメ!!!!」
少年は液体と個体を並べて見せた。
「それでいい。」
、と こたえると2つずつカゴに入れた。
会計を済まし、外に出ると車はすでに待機して待っていた。
「お、サンキュー!!」
運転手は荷物を受け取り助手席に置いた。
車はまたあの長い道を走り出した。
施設外の食料はとてもおいしかった。
しかし後で運転手に
「それよく食べられるな…。」
、と 言われたがどういう意味だったのだろうか…‥。
車は走り続けた。
長い長い道を‥…
ワタシを乗せて…。