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脇役の苦悩を主人公は知らない!?  作者: 竜宮


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第27話 意外な組み合わせ

 本日は土曜日なので学校は休みだった。

 俺は昨日の主人公の相談に対してどう処理するべきか頭を悩ませながら公園へ向っている。

 別に散歩をしている訳ではない。この物語の責任者である俺は祝日であっても部屋でだらだらと休むわけにはいかない。本当は主人公達と遊びに行く予定を立てていたのだが真中葵の呼び出しによって段取りが変わってしまっていた。

 佐伯裕樹の件はどうしようか。性癖なのでもう修繕不可能なのだろうか。もしアイと禁断の愛を育まれでもしたらラブコメというジャンルが壊れる。妹を好きなるのなら早めに伝えて欲しいものだ。すでに提出した構想を大まかに変更など出来ない。

 頭を抱えた俺は何気なく元気な子供達の姿を眺める。

 子供達は川に石を投げて無邪気に遊んでいるようだ。ちなみにあの子供達も脇役の一部なので一応は無邪気な子供を演じている。

 ただ、ランクが最下位に位置するのでエキストラと言ってもいい。物語にはあまり関係しないが街に誰もいなくなってしまっては不自然だからだ。

 自分自身も同じように子供の頃から脇役を演じていたなと懐かしさを感じていると見知った人物に気がついた。

 なだらかな坂に生えた雑草に一人で座り真剣な表情でスケッチブックに鉛筆を走らせていた。

 俺は気づかない振りをしながら自然に歩く。出雲かなでが風景画を書きに出掛けたのはすでに知っていた。

 俺としては主人公が近くにいないのに出雲かなでと二人で会っても何の特にもならない。気づかない振りをしてやり過ごそうとするが運の悪いことに出雲かなではこちらをじっと見つめだした。

 意識的に歩みを速めるがなぜか出雲かなではわざわざこちらに駆け足で近づいてくる。


「こっ……こんにちわ。アユトさん……」


 わざわざ来なくてもいいのに。ただ挨拶をされてしまっては同じ生徒会メンバーとして無視するわけにもいかない。


「こんな所で出雲さんと会うなんて。もしかして風景画でも描いていたとか?」


 ふと、出雲かなでの性格的に呼び止めてまで挨拶をするのだろうかと少し不思議に感じながら笑顔を作る。


「はい……そうです。今日は晴れてぽかぽかしていますし外に出てみようかなと……」


 出雲かなでは真っ白なセーターの裾に視線を向けながら恥ずかしそうに答える。

 黒のスカートは膝上でゆったりと風に揺られていた。制服ではなく私服姿を初めて見たが出雲かなでの雰囲気に合っていてとてもよく似合っていた。

 気温の話など軽い雑談をしていると出雲かなでは俺に向かって自分のスケッチブックを差し出した。突き出した指先は少し震えている。


「あのっ……良かったら見てくれませんか。まだ途中ですけど……」


 出雲かなでは瞳を左右に揺らしている。話を切り上げて退散するタイミングを計っていた俺は笑顔でスケッチブックを受け取った。

 川の流れや石の細やかな部分。遠くにかけられた橋なども丁寧に描かれており単純に上手だなと感じた。


「凄く上手に描けているじゃないか。感心したよ。本当にすごい。生徒会のみんなにも見せてみたらいい。たぶん俺と同じ感想だと思うよ」


 率直な感想を述べると出雲かなでは嬉しいのか必死で笑顔になるのを我慢しているようだった。恥ずかしさと嬉しさが込み上げて頬が小刻みに動いている。


「いっ、いえ。大したことはありません。アユトさんも風景画を描かれているので感想が欲しくて……ありがとうございましゅ!」


 深くお辞儀すると出雲かなでは我慢できなくなったのか表情を両手で隠しながら満面の笑みを作っている。


「暇人がこんな所で何をしているのかしら。あなたはやるべき事があるのではないの?」


 いきなり背後から声をかけられた。

 想定外の人物だったが態度には出さずにゆっくりと振り返る。

 そこには出雲かなでとは違い制服姿のマユミが堂々と立っていた。休日なのになぜ制服姿なのだろうと考えたが口には出さなかった。

 そういえばマユミはいつも制服を着ているなと感じるに留まった。


「なんで生徒会長がここにいるんですか?」


「私がここにいては何かまずいことでもあるのかしら。あなたに私の行動を決める権利はないのだけれど」


 マユミはいつも通りの態度で俺に視線を向けている。両手にはジュースを掴んでいた。マユミの呆れ顔はすでに見飽きている。なぜマユミがこの場に出くわしたのかは出雲かなでが答えてくれた。


「生徒会長とここで一緒に風景画を描いているんです……」


「生徒会長と?」


「はい」


「何で?」


 意外な組み合わせに驚きを隠せない。マユミと出雲かなでが遊んでいる可能性など考えの中にまるでなかった。主人公とヒロインの動向は把握しているがマユミがどこで何をしているのかは全く知らない。

 真中葵とならまだしもあまり学校でも会話がほとんどないこの二人が一緒に遊んでいるのは想像できなかった。そもそもこの二人が会話で盛り上がるのだろうかと余計な事を考えているとマユミが手に持っていたスケッチブックを奪い取った。


「出雲さんの創作活動を邪魔しないで。はい出雲さん。完成まで見守っているから頑張ってちょうだい」


 邪魔者扱いされた俺は二人と別れると目的地へと向った。

 余裕を持って家を出たのでマユミ達と少し話したぐらいでは待ち合わせ時間を過ぎる心配はなかった。だとしても本当に意外な組み合わせだった。

 マユミに何かしらの考えがあるのだろうかと考えながら俺は二人と別れた。

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