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『神の手違いが生んだ報われぬ者の転生録』  作者: Lark224a


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第95話 体育祭の目玉。

「それで、さっきのはどういうこと?」


「いや、あれは‥‥その、なんて言うか。」


「うん。なんて言うか?なにかな?」


現在、俺は右側には雪、左側には咲に道を塞がれ、逃げ場を完全に失った状態で詰められていた。原因は言うまでもなく、先ほどの借り物競争で起きた芽衣先輩への告白――あの一件だ。


「まさか、私たちからじゃなくて生徒会から選ぶなんて予想外だったわ。」


「だね。私たちのどっちかだったら、まだ納得も出来たんだけどさ、何でかなぁ~~何で全く関係ない人を選んじゃうかな~~私たちじゃあダメなのかな??」


雪の声は明るい調子を保っているが、その目からは完全にハイライトが消えていた。その奥にある不安と疑念が露わになっている。


このモードに入った雪は、かなり面倒くさい。自分の中の不安が消えるまで、決して納得しないタイプだ。


つまり、このままでは終わらない。


だからこそ、ここは最終手段を使うしかない。


「いや、俺だって二人に頼むことも考えたよ。でも、俺がどっちかを選べば、選ばれなかった方は確実に傷つくだろ?俺はそれが嫌だったんだ。だからああいう選び方をした。でも、そのせいで二人に心配を掛けたのは事実だから、この体育祭が終わったあとに埋め合わせとして――”遊びに行こう?”それで許してくれないか?」


自分でも分かるくらい、これは卑怯な手だ。


だが、確実に効く。


なぜなら俺は、これまで誰かに誘われてもほとんど応じたことがないし、自分から誰かを遊びに誘うことなど一度もなかった。そんな俺が自分から「遊びに行こう」と口にすれば、それだけで二人にとっては特別な意味を持つ。


だからこそ――


「え?まぁ‥‥確かに悠真の言っていることも理解できるから、それでいいわ。雪もそれでいいでしょ?」


「う、うん。私もそんなに怒ってないから、それで全然いいよっ。」


――ほらな。


内心でそう呟きながら、俺は小さく息を吐いた。


これで、この場は収まった。


完全な解決とは言えないにしても、少なくともこれ以上追及されることはないだろう。


そうして一応の決着を迎えた俺たちは、三人でC団の席へと戻り、それぞれの位置に腰を下ろすと、何事もなかったかのように再び応援へと戻っていった。



その後の体育祭は特に問題なく進んでいくにつれて、その熱量も次第に高まっていった。そして、その熱気が最高潮に達しようとしたタイミングで、体育祭の目玉種目であるリレーが始まる。


最初のリレー種目は学年別の4×100mで、選ばれているのは各団の中でも足の速い者、あるいは運動部に所属している者たちばかりで構成されていた。そのため、どの団も似たような実力のメンバーが揃っており、この時点で接戦になることは誰の目にも明らかだった。


やがて第一走者たちがそれぞれのポジションへと着き、グラウンド全体が一瞬だけ静まり返る。次の瞬間――パンッ!!という乾いた音が響き渡り、その合図とともに全員が一斉に地面を蹴った。


スタートから全力で飛び出した選手たちは、脇目もふらずに一直線に駆け抜けていく。その必死な姿に呼応するように観客席からも大きな声援が飛び交い、グラウンド全体のボルテージはさらに一段引き上げられていった。


第一走者は最終コーナーを回り込み、減速することなく次の走者へとバトンを繋ぐ。どの団も目立ったミスはなく、滑らかな受け渡しでレースは進行していき、現時点での順位は上からA団、B団、D団、C団という並びだったが、その差はほとんどなく、僅かなミス一つで順位が入れ替わるほどの僅差だった。


そんな中、レースが動いたのは第二走者の終盤だった。前を走っていたD団の選手のコース取りがわずかに外へと膨らみ、その一瞬のロスによって後方にいたC団が一気に距離を詰める。並走状態のまま最終コーナーへと突入し、次の走者へバトンを渡す直前、ほんのわずかに前へ出たC団がそのままD団を抜き去った。


この時点で順位はA団、B団、C団、D団へと変わり、第3走者へとバトンが託される。そして、C団の第3走者としてコースに飛び出したのは、うちのクラスで最も足が速い男――南雲だった。


なぜ彼をアンカーではなく第3走者に配置したのか、その意図は分からない。だが、この場面で送り出された以上、そこには何かしらの狙いがあるのだろう。


正直なところ、南雲のことを応援したいとは思えない。しかし、ここで私情を挟むほど愚かでもない。俺はその感情を押し殺し、周囲に合わせるように声を張り上げた。


すると、観客の声援を一身に受けた南雲は、まるでそれに応えるかのようにさらに速度を上げていく。前を走っていたB団の走者を難なく捉え、追い抜き、その勢いのまま先頭を走るA団へと食らいついた。気付けば両者は完全に横並びとなり、観客席からは一層大きな歓声が上がる。


そして、そのままの勢いで両団はアンカーへとバトンを繋ぎ、勝負はついに最終局面へと突入した。


アンカーを任された二人は共に陸上部の選手であり、その走りは他の走者とは一線を画していた。無駄のないフォーム、最適化されたコース取り、そして最後まで落ちないスピード。その全てが噛み合い、まさに完成された走りを見せている。


二人は並んだまま最終の直線へと入り、わずかにA団が前に出ているものの、その差は数ミリにも満たない。どちらが勝ってもおかしくない状況の中、観客は総立ちとなり、声を枯らして叫び続ける。


「頑張れ!!」

「いけーーー!!」


その声援がグラウンドを震わせる中、二人は最後の一歩まで全力で駆け抜け――


決着は、C団の勝利だった。

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