第94話 黒歴史爆誕。
俺は今、人生で最大のピンチを迎えている。
それも全て”好きな人”という意味の分からないお題を引いてしまったことが、全ての原因だ。これを引いたのが彼女持ちや、凄いイケメンであればやりようはいくらでもあったと思う。
だが、引いたのはビジュアルは平凡かつ彼女もおらず、強いて言うのであれば東雲家の騎士をやっているというところしか良いところがない俺だ。
こんな俺が”好きな人”という無理難題なお題を突破する方法など、あるわけがない。
などと考えている間にも時間は無くなっていき、他の選手は着々と準備を整えていた。
このままでは”敗北”が決定する。
いや、それだけはマズい。ただ負けるのであればお題で言い訳をすればいいが、ここで最下位を取ってしまうと、あの嫌な先輩との賭けで何を言われるか分かったもんじゃない。
ここで最下位を取るなど絶対に出来ない。なら、覚悟を決めるしかない。
俺はこの選択によって起こることに目を伏せて、今はただゴールをするということだけに集中した。そして、その結果、選んだ人は――芽衣先輩だった。
「芽衣先輩!!すいません。少しいいですか?」
と相手の返事も聞かずにその手をとってゴールに向かって走り、俺はギリギリ2位でゴールすることが出来たが、問題はここからで、ゴールと同時にそのお題も明かされる。
「2位は白瀬 悠真くんです!!さて、その問題のお題ですがッ!!何と‥‥好きな人!!ということはつまり白瀬悠真くんが連れてきた人が好きな人ということになりますが、その人はあの生徒会の副会長!!神成 芽衣先輩だ!!!!
これはとんでもないことになりましたよーー!!いや~~二人は同じ生徒会のメンバーですからね、そういう気持ちを抱いても仕方がないと思いますし、神成先輩はこの学校でも指折りの美少女ですからね~~。いや、二人の関係が今後どうなるのか、とても興味があります!!」
と放送係はかなり熱い熱量で解説してくれた”おかげ”で、俺は今、全生徒から注目されているが、今はそんなことよりも、隣で顔を真っ赤にしている芽衣先輩をどうにかする方が先だ。
「すいません。芽衣先輩を巻き込んでしまって‥‥でも、頼れるのが芽衣先輩しかいなくてですね。」
「えっ!!い、いや‥‥その、うん、全然‥‥ダイジョウブだし‥‥コウハイの頼みを答えるのも‥‥先輩の仕事‥‥だからね!!うんうん。」
芽衣先輩は明らかに異常をきたしていたし、そして絶対に俺が本気で告白したと勘違いをしている。男として最低なことをしたことは分かっている。
だが、俺が選べる人は芽衣先輩しかいなかった。
雪と咲のどちらかを選べば、今後の関係に何かしらの影響が絶対に出るから選べない。なら、他の関係を持っている人から選ぶことになり、対象は生徒会になる。
会長はその人気とカリスマ性から選べば俺に殺害予告が来そうだし、相沢先輩は俺が受け入れられない。よって残るは芽衣先輩だけとなる。しかも芽衣先輩はその性格的に、俺の告白など「え~~困っちゃうよ!!」とか言って余裕で対応してくれそうだった。
だが、結果としては芽衣先輩は俺の告白を本気で受け取ってしまった。
ここは本当に申し訳ないと思っているが、その誤解だけは絶対に解いておくべきだ。
「あの~~さっきのお題というか告白は‥‥ですね。」
とその誤解を解こうとした時だった。芽衣先輩の頭がボフッ!!と爆発した。そして――
「私は全然気にしてないから!!あーーちょっと用事を思い出したから!!また、後でね~~!!」
と全力で何処かへと逃げて行ってしまった。
そしてその光景を傍から見ていた人たちは『あっ、振られた』と全員が認識し、俺は全校生徒がいる前で告白をして振られた人間となってしまった。
あぁ‥‥穴があったら入りたい。こんなことになるなら棄権しておけばよかった。
と心の底から思うのであった。




