第8話 幼馴染という存在。
「見て見て悠真ーー!! 綺麗なお花!!」
無邪気に子供のようにはしゃぐ雪の姿が目に入って来た。よっぽど遊べることが嬉しかったのだろう。ここ数日は用事があると断っていたからな‥‥今日ぐらいは遊んでやるか。
「そうだね、綺麗だね。雪は花が好きなのか?」
「うん、好きだよ!! 悠真は? お花好き?」
「うーーん。分からない。好きでも嫌いでもないかな。」
そう答えると雪は少し悩んだ顔をした後に、
「じゃあ悠真は何が好きなもの? 幼稚園でも遊ばないで本ばかり読んでるし、本が好きなのって聞いたら別に普通って答える。悠真の好きなものってなに?」
雪に聞かれて思い返してみたら、前世を含めても好きなものも好きなこともなかった。ただ、必死に生きているだけだった。転生した今だってそうだ。何が起こるか分からない未来の為にと少しでも自分を強くしてるだけで、好きなことはやっていない。
「‥‥好きなものか‥‥ないな。いや、知らないんだな。」
「知らない? 自分のことなのに?」
「うん。これが好きとかを感じたことがない。だから分からない。これって変なのかな?」
“変”か“変じゃない”かと言えば、間違いなく変に分類されるだろう。でも、俺にとってはこれが普通のことなんだ。だから周りの人が意味もない遊びとかしていると、少し「ん?」ってなるんだ‥‥雪もそっち側なんだろうな。
と俺が思っていると、いつの間にか雪が横に座り、手を取って来た。
「全然!! 変じゃないよっ!! 好きな物や事が見つからないなら、見つけたらいいだけなんだから!!」
「ふふ‥‥そうだね。見つければいいだけだね。」
「じゃあまずはブランコで遊ぼう!! 行くよ!!」
そのまま俺の手を引いて走って行く。
本当にこいつは良い奴だ。前世で雪みたいな人と出会っていれば、俺の人生はもっと違った形になっていたのかな? いや、それは誰にも分からないことだ。だから今は、この人生を楽しめば良いだけだ。
一応やっておくか――『鑑定』と雪を鑑定した。
白河 雪 5歳 Lv1
・スキル
全属性適応・魔力循環効率強化・マナに愛された者
・称号
なし
「はぁ?」
「え? どうかした?」
「い、いやなんでもない。ブランコをやろう。」
「うん。」
まさか雪がスキルを3つも持っているとはなぁ。最初のスキルはだいたい1つかなしの人がほとんどで、最初に2つのスキルを持っている人は全員Sランクの探索者になっている。
あの魔法使いで有名な美鈴さんであっても2つだというのに、それを越えているということはつまり雪が探索者になればSランクすらも超える探索者になる可能性があるってことだ。
どうするか‥‥この事実を伝えるべきか? それともこのまま黙っているべきか。
この事実を伝えれば間違いなく雪は探索者になると言うだろう。でも、それはどうか? と思う。探索者は死と隣合わせの仕事だ。そんな危ない仕事を雪にやって欲しいとは誰も思わない。
だが、雪の力を隠せば‥‥その損失は計り知れない。今のダンジョンの情勢を大きく変える人材なのは間違いないだろう。
どうするべきか‥‥いや、それは俺が考えることじゃない。未来を決めるのは雪自身だ。高校生に上がるタイミングで強制的に適正チェックも受けることになる。なら、その先の未来を決めるのは雪であって、俺じゃあない。
なら、俺のやるべきことは雪を少しでも強くして、例え探索者になったとしても生きれるようにしておくべきだ‥‥幼馴染として。
そうして俺は少しでも雪を強くするために、色々と魔力のノウハウを入れていくのだった。もちろん、雪にはその事実は伝えずにな。




