第84話 狙われたのは誰か。
「なるほど。あの七瀬家の令嬢がそんなことを言っていたのね。確かに、七瀬家と一ノ瀬家は仲が悪いことで有名だからね、そういう思惑があってもおかしくはないと思うわ。」
「うん。芽衣先輩も昔は仲が良かったけど、今はかなり悪いって言ってた。」
「でも、いくら仲が悪いって言っても、相手を貶めるようなことをするものなの?名家ってどこの家もそうなの?」
「全ての家がそうじゃないわ。まぁ、多少のいざこざはどこの家にもあるとは思うけど、七瀬家と一ノ瀬家の対立はいざこざレベルを超えているわ。だからこそ、相手の家を落とすような手も考えているわけだしね。」
「なるほどね。名家の子供って大変なんだね。ってことは咲ちゃんの家にも、そういう相手っているの?」
「私の家だって仲が良くない人ぐらいいるわ。だけど、本気で対立するほどのものじゃない。やったとしても言葉による軽い嫌がらせぐらいで可愛いものよ。」
咲も言っていたが、名家同士の”いざこざ”はどこの家にもあることは何となく理解はしていた。だけど、相手の家を本気で潰そうとするのは”いざこざ”の枠を超えて戦争になっているのではないかとも思う。
仮にだけど七瀬先輩の何かしらの策が成功した場合は、一ノ瀬家に多大なるダメージが及ぶことは目に見えている。なら、それは一ノ瀬家の未来を潰すことにも繋がるのではないか?
それを”いざこざ”と見過ごしていいものなのか?いや、ダメな気がする。これからは分からないが、現状は生徒会のメンバーとして共に仕事をしている仲間なのだから、仲間に手を出されて黙って見ておくことなど出来ない。
それにだ。何となくではあるけど、会長も七瀬先輩も本気で相手を憎んでいるようには見えなかった。家の関係があるから仕方なくそういう態度を取っているだけに見えた。
なら、その関係は良くない。家の関係によって大切な友達を失うのは、あまりにも悲しいことだ。
「ねぇ、咲。その七瀬先輩がしようとしていることって、分かったりしない?」
「うーーん。正直‥‥難しいわね。この情報を持っているって七瀬家でもごく一部の人間しか知らされていないと思うわ。それを、私達が知っていると知られた場合に真っ先に疑われるのは、あなたよ“悠真”。
そして、あなたは私の騎士であるから、それは七瀬家と東雲家の対立になるわ。だから、相手にはこっちが情報を持っていることを知られないように、探る必要があるわ。
それは、あの七瀬家を相手にやるのは、いくら東雲家の力を持ってしても至難の業よ。」
咲の言っていることは正しい。こっちの動きを悟られてしまったら一番最初に疑われるのは間違いなく俺になる。そうなれば咲も黙っていないだろうし、両家の戦いになるのは目に見えている。
今回の件に関しては『手の出しようがない』それが答えだった。
俺と咲がそう決めるなか、雪だけは全く違う意見を出した。
「二人とも事を大きく考えすぎなんじゃない?そもそも悠真が聞いた言葉って“一ノ瀬家”を落とすではなくて“一ノ瀬”を落とすでしょ?それって、狙いが一ノ瀬家じゃなくて一ノ瀬先輩ってことじゃないの?
そして、そう考えると七瀬先輩の狙いも何となく分かってくるよね。学校で一番力を持っているのは、間違いなく一ノ瀬先輩だよね。そんな先輩が落ちれば次に注目されるのは、間違いなく七瀬先輩になるよね。
七瀬先輩の狙いはそれだと私は思うよ。もちろん、二人が言っていた家が狙いな可能性もゼロじゃないと思うけど、日本を支えている家同士が本気で戦争をするとは、どうしても思えないんだよね。」
たしかに雪の考えもあり得る。
と俺達はさらなる熟考をしようとした時だった。
「ウオオ!!」
と目の前にオークが現れるのだった。
「この話は一旦忘れましょう。今は、ダンジョンに集中するわよ。」
と咲の言葉によって俺達は再び戦闘に集中するのだった。




