第81話 表と裏で人は違う。
突然の発言に俺、相沢先輩、芽衣先輩は唖然とするなか、会長だけは平然とした態度をしていた。
「結が冗談を言うなんて珍しいじゃないか。」
「うんうん。全然、冗談じゃないよ。本気で、白瀬悠真くんを風紀委員にくれないかなって言っているよ。」
「‥‥冗談じゃないなら無理な相談だ。彼は生徒会のメンバーだ。それを違う所に渡すなど出来るはずがないし、例え出来たとして‥‥それは私が許さない。」
「彼は生徒会でいるより風紀委員の方が合っていると思うけど?生徒会のやっていることは学校の仕組みを良くするだけで、生徒自体の改善は風紀委員が担当している。なら、模範となる生徒は生徒会にいるより、風紀委員にいる方が効力を発揮すると思う。それに、彼は探索者だよ。」
「探索者が風紀委員にいるという事実は、それだけで抑止力にもなる。それは生徒間に発生するトラブルを未然に防ぐことにもつながると思う。よって、白瀬悠真は生徒会にいるよりも風紀委員にいる方が、学校にとっても実りがある。どうかな栞ちゃん。
もちろん、ただでは言っていないよ。白瀬くんを貰う代わりにこっちからも優秀な生徒を生徒会へと送るつもりでいる。これなら、問題はないでしょ?」
「問題だらけだが?まず、そもそも学校の規則で『首席を取った者は生徒会に入る』がある。そしてこれに選ばれたのが悠真だ。それに私は悠真の力は風紀委員ではなく生徒会でこそ発揮されると思っている。」
「それは探索者の白瀬悠真もそうだが、白王に通う中学生の白瀬悠真であってもそうだと思っている。結のような人の一面だけではなく、全部で判断してそう思っている。だから、悠真を風紀委員へと渡すことは出来ないし、渡す気もない。
私達は集会の打ち合わせ中で忙しい。要件が済んだなら、出て行ってくれないか?」
「ふーーん‥‥そっか。栞ちゃんならそう言うと思っていたよ。でも、私は諦めないからね?今日は挨拶だけだから、このまま帰るよ。白瀬くん。いつでも今日のことで風紀委員に来たいと思ったら気軽に来ていいからね?風紀委員は君を歓迎する。じゃあ、そういうことでね?」
と七瀬さんは部屋を出て行ったが、生徒会には彼女が残した空気がしっかりと残っており、気まずい感じで打ち合わせは終了した。
◇
打ち合わせも無事に終わり、集会へと向かっている時だった。
「やっほ」
と芽衣先輩が元気よく話しかけてきた。
「芽衣先輩、お疲れ様です。」
「うん、お疲れ~~。いや、さっきの結ちゃんには驚いたね~。まさか、悠真を風紀委にくれって言うなんて思いもしなかったね。」
「そうですね。急なことだったので、自分もどう反応したらいいのか分からなかったです。」
「そんなこと言って、実際は生徒会より風紀委の方に行きたいんじゃないの?結ちゃんは美人だし、他のメンバーも美人さんが多いからね。風紀委員は。」
「やめてください。そんなこと思ってないですから。それより、生徒会と風紀委って仲が良くないんですか?なんか二人が話している時にすごいピリピリ感を感じたので、どうなんですか?」
「あーー。そりゃ~~それぞれの仕事的にもぶつかることはあるよ。でも、あの二人に関しては仕事じゃなくて家が関係しているから。栞ちゃんと結ちゃんの家って昔はすごく仲が良い関係だったんだけど、ある代から急に悪くなったの。
で、今では互いの家を完全に敵視しちゃってるってわけ。本当に、名家って大変だよね~~。」
「名家って大変だよねって、芽衣先輩の家も名家じゃないですか。」
「いやいや、私の家と栞ちゃんや結ちゃんの家を一緒にしちゃいけないよ。あのレベルの名家は国の中枢だからね。私の家はそこまで大きくないよ。それこそ、悠真が騎士になった東雲家も、そのレベルの名家だよ。」
「‥‥知っていたんですね。」
「まぁーーね。それぐらいの情報は持ってるよ。でも、意外だった。悠真って社会に出て一生懸命やるっていうよりは、ほどほどぐらいの成績や実績を残して、あとは一人で自分の世界に過ごす人だと思っていたから、東雲家の騎士になったって聞いたときは驚いたよ。」
「まぁ、自分もそっちタイプの人間だと思っていました。だけど、流れってあるもので、気がついたら騎士になっていて、今では、こっちの方がしっくりしてます。」
「そっか。なら、少しもったいないことをしたな~~。」
「ん?もったいないことですか?」
「うん、そう。悠真がそういうのに興味があるんだったら、私の騎士になって欲しかったから。」
「な、何を言ってるんですか?こんな時に冗談は良くないですよ。」
「全然、冗談じゃないよ。めちゃくちゃ本気だよ。もしの話だけど。悠真が東雲家の騎士を辞めたいってなったら、いつでも私に声を掛けてね?私の家の力を使って全力で引き抜くから!!
じゃあ、先に行くね。悠真も急いで来るんだよ!!栞ちゃんは遅刻にはすごくうるさいから。」
「あっ‥‥はい。」
芽衣先輩は逃げるようにして走って行ってしまった。




