第79話 久しぶりの学校。
「ふぅ~!!ふぅ~!!よし、今日のデイリーも終わった。そろそろ、行く準備をしないとな。」
無事に退院して、それから2、3日ほど様子見で休み、特に体への異常もなかったので、今日から登校する運びとなった。
そういえば、入学式の朝もデイリーをこなしていたな。今を振り返ると、今日まであっという間だった。日々が過ぎて行く時間は本当に速い。
時間が経つ速度は年齢と共に速くなる一方で、小学生の頃は一日が凄く長く感じていたのに、今はその半分ぐらいの時間になった気がする。
まぁ、それだけ時間が速く感じるというのは、毎日が充実している証拠だな。
などと日々を振り返っていると、リビングから――
「悠真!!今日から登校でしょ?早くご飯食べちゃいなさい。」
と母の言葉が飛んできた。母の言葉まで一緒とか、時間が巻き戻った気になる。それだけ、この日々が日常になっているってことだな。
「あぁ、今、行くよ。」
短く返事をしてリビングへと戻り、朝食を口にした。
◇
「それじゃあ、行ってくる。」
と家を出た。
俺が向かうのは学校ではなく、咲の家だ。登校をする時は“必ず迎えに来て”という我儘から始まった。始めの頃は迎えに行くなんてすごく面倒だったし、何でそんなことをしないといけないのかと、すごく嫌だった。
でも、それも数をこなして日々やっていれば慣れていくもので、今は迎えに行くことが当たり前になっている。
はぁ‥‥俺も甘いよな。他の騎士も迎えに行くとかしているのか?そもそも、俺は俺以外の騎士の存在を知らない。咲ぐらいの名家でダンジョンに関する業務展開をしているところであれば、騎士を任命しているだろう。
クラスでいうと南雲だろう。学校全体で見るなら生徒会長とかもだろうな。今度、一緒になったタイミングで聞いてみるか。会長の騎士が一体どんな人なのか、少し興味もあるしな。
などと適当なことを考えていると、いつの間にか咲の家に着いていた。俺は事前に貰っていたカードを使って門を開けて中へと入って行くと、ちょうど庭の手入れをしていた「山本さん」と出会った。
山本さんは咲の専属のメイドさんで、俺が迎えに来る前は山本さんが車で送っていた。
「これは悠真様、いつもお迎えご苦労さまです。お嬢様はもう少し掛かると思いますが、何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」
「いや大丈夫ですよ。それと、様はやめてください。自分は東雲家の人間ではないので、普通の対応で大丈夫です。本当に気楽な感じで頼みます。」
「そうでしたね。いつもの癖で様付けで呼んでしまうんです。すいません、悠真さん。」
「俺がお願いしている立場なので、山本さんが謝る必要はないですよ。それにしても咲は遅いですね。」
「はい。お嬢様は朝が苦手ですから準備に時間が掛かるんです。それに、今は雪様も一緒に暮らしていますから、夜遅くまで二人でお話しをしているので、それも原因の一つでしょうね。」
「はぁ‥‥本当に、あの二人は‥‥手が掛かる。」
雪は全寮制の探索者育成学校を辞めて、白王へと編入した。それによって住む家がない状態になったが、そこは東雲家が新築の家を用意するはずだった。
だが、咲が俺に毎朝のお迎えをさせていることを知ってしまった。当然、雪も自分も迎えに来て欲しいと駄々をこねた。
だが、時間と距離的に俺の家から咲の家に寄って雪の家に行くのは無理なので断ったのだが、咲の――
「それなら一緒に住めばいいでしょ?」
という一言で、二人が一緒に暮らすことになった。
本当に東雲家の人間って、突発というか、いきなりというか、思ったことや思いついたことを後先考えずに即行動に移すのは本当にやめて欲しい。それら全ての被害は本人ではなく俺にくるからさぁ。
現に、朝の待つ時間が絶対に延びている。
そこから、しばらく待っていると“ガチャ”とようやく家の扉が開き、二人が出てきた。
「ごめん。悠真‥‥咲ちゃんの準備が全然終わらなくて待たせたよね?」
「雪。嘘を吐くのは良くないわ。準備が遅かったのは私じゃなくて、あなたでしょ?」
「嘘なんか吐いてません。私じゃなく咲ちゃんの準備が遅かった。」
「違うわ。遅かったのは雪よ。」
「違うよ。咲ちゃんだよ。」
来てそうそう、くだらないことで言い争いを始める二人だった。俺もこれ以上は付き合いきれないと感じて、一人で学校へと向かうのであった。




