第7話 小さな軌跡。
俺はこの世界に生まれて――5年が経った。
この5年間を振り返れば”もどかしい”時間だったと思う。自分で歩くことも出来ず、満足に話すことも出来ない。これは赤ちゃんであったから仕方ないことだとは思うが、それでも不便さと自分で動きたいと思ってしまう。
でも、そんなもどかしいさも今は少し懐かしさと寂しさを感じている。
5歳になれば話すことも、歩くことも、考えることも出来るようになり自分が人として成長したんだなということが良く分かる。
そして、その成長は歳以外にも表れている。
『今週のウィークリークエスト。』
1、運を除く全ステータス200を超える。
2、言語の勉強『日本語以外』。
3、精神を安定させる為に毎日瞑想を3時間『連続じゃなくてよい』。
4、毎日10キロのランニング。
5、幼馴染との良好な関係を維持する。
と赤ちゃんの時とはクエストの質と難易度が上がっていた。
これは、俺自身が成長したことが理由だろう。
まぁ、その分もらえる物が美味しくなるから俺としては悪くはないんだが、毎回のクエストに人間関係を持ち出してくるのが、少しあれだが‥‥それ以外は特に苦じゃあないので毎週必ず達成している。
などど頭で考えているとピピッ‥‥ピピッ‥‥とアラームが鳴った。
「ふぅ~~これで今日の瞑想も終わったな。じゃあ、いつも通り言語の勉強をするか。」
と勉強机へと向かい英語の勉強を始めた。
5歳になった俺には既に自分の部屋が与えられている。
3歳の頃に父と母に自分の部屋が欲しいと頼んだのだ。普通であれば5歳で自分の部屋を持つのは早くダメだと言われるが、俺はそれまで子供として物を強請ることもしなければ”あれがしたい””これがしたい”と言うこともなかったからか、初めて俺のお願いを聞いた両親は凄く喜んで部屋を与えてくれた。
そのお陰で今はこうして静かに勉強をすることが出来る。もし、この部屋が無ければ”姉や雪”に邪魔をされて勉強どころではなかったと思う‥‥父と母に感謝だ。
そうして俺はペンを動かして5歳児には早すぎる問題を解いていった。
◇
一通りの勉強を終えた俺はリビングに降りると、ソファーでだらけている姉がギロッと俺を睨んできた。
「やっと降りて来た。悠真、あんた勉強し過ぎよ?」
全くこの姉は。俺が勉強し過ぎているんじゃない。あんたがしてなさすぎるんだ。と、だらけている姉に向かって嫌味を込めて‥‥。
「姉ちゃんがしてなさすぎるの。小学2年になってるのに、姉ちゃんが勉強をしている姿を見たことがないんだけど‥‥成績は大丈夫なの?」
「うぐぐ‥‥大丈夫だもん。」
姉は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「その顔は大丈夫な人の表情じゃあないよ。はぁ‥‥まぁ、うん‥‥頑張って。」
「その諦めているような目をやめなさーーい!! 弟の癖に‥‥このッ!!」
と姉が俺に向かって飛びかかってきて、こちょばしてきた。
「アハハハハ!! ご、ごめんって姉ちゃん!! アハハハハっ‥‥やめてっ苦しいから!!」
「やめるわけないでしょ!! 優秀で生意気な弟への仕返しよ!!」
と姉弟で遊んでいると、キッチンから――
「2人共遊んでないでご飯にするから、手を洗ってきなさーーい。」
母の言葉が入ったことで姉の手が止まったので、今だと姉の手から逃れてその場を離れた。
そして家族‥‥俺、姉、母の3人で食卓を囲んだ。
「あれ、パパは?」
「仕事よ。なんでもダンジョンで異常が起こってるらしいの。」
前にも言ったが父と母は探索者ではないが、ダンジョン関係の研究をしている研究者なので休みはまちまちで、問題が起こると家に何日も帰ってこないこともある。だが、そういう時期は母が育休という形で休みを取っているので、特に家族としては問題はないが――。
ダンジョンで‥‥異常か。最近、ニュースでも言っていたが魔物が強くなっていると報道していたが‥‥それと何か関係があるのか? この後少し調べてみるか‥‥心配だし。
「ママは行かなくていいの?」
「私は大丈夫よ。ママにとって研究よりもあなた達2人が大切だわ。それに私が家に居ればパパも全力で仕事に向かえるでしょ?」
「うん、そうだね。」
「それじゃあ、いただきましょうか。じゃあ、手を合わせてください――パチン。いただきます。」
「いただきます」「いただだきまーす」
――と3人で食事を始めた。




