第78話 一週間ぶりの我が家。
東雲家の関係者ということもあり、見送りにくる人の数が多い。
前に一度入院した時は見送りなどなかったはずなのに、流石は日本を代表する名家だ。こういった場での対応が一般人とはまるで違う。
「今までお世話になりました。」
見送りに来てくれた人達に別れの挨拶をして、迎えの車に乗った。
入院して一週間。
全ての傷とリハビリ過程を終えて無事に退院となり、しばらく家でゆっくり過ごすことになる。
特に問題が無ければ、その後はいつも通りの日常に戻る予定だ。
「あんた。あれだけの人に見送られて‥‥どこかの偉い人みたいね。」
そんな嫌味みたいなことを言ってきたのは、我が姉だ。
姉にも、姉だけじゃなく家族には、この一週間本当に迷惑をかけた。入院の服や退屈を凌ぐ本などを持ってきてくれたのだ。
俺としては申し訳ない気持ちになる。
「俺が偉いんじゃないよ。偉いのは咲だから。」
「そうね。あんた、まだあの子の騎士をやるつもりなの?」
「うん、そのつもりではいるよ。今回のことで自分がまだまだだっていうことに気付いたからね。もっと強くならないとダメなんだ。ってなると、力がある東雲家の騎士でいるのは俺にとっても都合がいい。」
咲の騎士でいることに、敢えて理論ずいた言葉を使って答えた。
こう答えておけば姉の機嫌が悪くならないで済むのだ。
前に一度だけ「咲の騎士でいたい」と自分の気持ちを答えたら、何故か機嫌が悪くなった。だから咲や東雲家の話題の時は、こうして気持ちではなく適当な理論ずいたことを言っておけば姉も納得してくれる。
「そうね、それがいいわ。ところで、雪とはどうなったの?話をしたって聞いたけど。」
「あー。雪に関しては“一緒にパーティーを組む”ことになった。」
その言葉を言った瞬間、車内の温度が急激に下がった気がした。
――完全に失言だった。
咲のことに気を取られて、パーティーを組むことを言ってしまった。
ヤバい。やらかした。
いや、待て落ち着こう。まだ取り返せるはずだ。
俺が必死に言葉を探していると、今まで聞いたことがないぐらい低い声で――
「じゃあ、これからは三人でパーティーを組むってこと?」
と聞いてきた。
「いや、そ、そのね。事実的にはそうなんだけど‥‥意味的には違うというか。その何というか、そう!!咲が今回のイベントでの雪の強さに感銘を受けて、それでパーティーを組むことになった。だから三人でパーティーを組むというよりは、雪と咲が二人でパーティーを組むことになったから、俺はその付人みたいな者だよ!!だから仲良くやってますって感じじゃないよ。」
「‥‥」
姉は何も言わなかった。
ただ下を向いたまま黙っている。
俺はただただビクビクしていた。
流石に、こんなバカみたいな言い訳であの姉を騙せるわけがない。
――そう腹を括った、その時だった。
「なんだそうなのね。私はてっきり三人でパーティーを組むと思ったけど、違うのね。」
まさか信じてくれるとは思いもしなかった。
本当にこんな言い訳で騙される奴の頭が良いとは信じ難いが、結果としては丸く収まった。なら俺としても、これ以上この話題を広げるつもりはない。
「はぁ~~助かった。」
「ん?何か言った?」
「んん!!何も言ってないよ。」
こうして俺と姉は、車に揺られながら自宅へと帰るのであった。




