第76話 あれ?例の約束はどうなった?
「ね、二人とも‥‥私の事を忘れないでもらっていいかな?まだ、話は終わってないよね?だって、イベントの前に私と交わした約束の件が残っているよね?」
交わした約束‥‥あっ!!そうだ。
確か、咲と雪が俺の許可なしに俺の身を掛けて勝負をしたんだったな。順位が高い方が勝ちだったよな。
あれ?ってことは――俺って、咲から雪の物になるってことか?
「分かっているわ。その件もちゃんと話すつもりよ。」
「じゃあ、ちゃんと話してよ。」
「私と雪がしていた勝負を覚えているわよね?」
「あ、うん、覚えてる。あれだよ?順位が高かった方が俺の所有権を持つみたいなことを言っていたよな?でも、流石に冗談だろ?俺だって許可してないし、二人が勝手に言っていたことで、マジでやっていたわけじゃないよな?」
そんな俺の言葉に対して、二人は真顔になった。
「本気よ。」
「本気に決まってるじゃん。」
――と。
「いやいや。ちょっと待ってよ。じゃあ、俺の主は咲から雪になるってことか?」
「うん、本当ならそうなるね。でも、私的にも今回のこの結果には納得してないの。だって、形はどうであれ、私も悠真と同じようにリタイアしているし、咲ちゃんに助けてもらっているからね。でも、勝負は勝負ってことで、折衷案になったの。」
「‥‥折衷案??」
「そうよ。雪の目的はあなたと共に一緒にいること。そして、私の目的は私の騎士を続けること。二つの目的は決して共存できないわけじゃない。だから、そこで――三人でパーティーを組むことにしたわ。」
突然の発表に、俺の頭はまったくついてこなかった。
だって、雪には雪の人生がある。今だって探索者の育成学校に通っているはずだ。そんな簡単に、誰の許可もなくパーティーを組めるわけがない。
「いや、ちょっと待って。それは無理だろ?だって雪は育成学校の人だろ?学校の許可なしでパーティーなんて組めるわけがないし、そもそもダンジョンの探索の許可がおりないだろ。」
「うん、普通はそうだね。」
雪はあっさりと言った。
「だから、学校は辞めたよ。」
「‥‥はぁ???」
思考が一瞬止まった。
「学校を辞めた!?じゃあ、お前って‥‥中退ってことか?これから、どうするんだ?」
「もちろん、転入するよ。悠真と咲ちゃんがいる――私立白王中等教育学校にね。」
あ、ダメだ。
すごく頭が痛くなってきた。
俺が寝ていた間に、事が色々と起き過ぎている。
優勝だと思っていたら失格になっているし、いつの間にか敵同士だったのに仲良くなっているし、別れた幼馴染は学校をやめて同じ学校に転入してくるし、そして三人でパーティーを組むことになっているなんて、誰が想像できたか。
俺は何か別の世界に転移でもしたのか?
本当の俺は、あのダンジョンで死んでいたんじゃないのか?
あぁ、そんなわけないか。
誰か俺の代わりに、この状況を理解してくれ。
そんな悲痛の嘆きなど二人に届くはずもなく、無情にも咲が更に話を進めていく。
「そういうことになったわ。雪は既に転入試験にも合格しているから、同級生になるわ。それと悠真が言っていた育成学校については、結果的には引き抜きをしたことになるから、そこは東雲家で手を打ったから、安心していいわよ。」
「本当にすごいよね。あの南雲グループも東雲家には強く出れないんだね。私の転入手続きもパパっと問題なく終わるから、すごく驚いたよ。」
「ふふ、まぁ――ね。これぐらいはやってのけなきゃ、名家は名乗れないわ。」
楽しそうに話す内容を聞いて、俺は思考を完全に”放棄させられた”というより、”した”と言った方が正しいな。
もう、どうでもなれ。
俺は知らん。
――と、全てに蓋をするのだった。




