第73話 すべての終わり。
あぁ‥‥全てに疲れた。
ダンジョンの中は地獄だ。戦って、戦って、戦い続けて‥‥ようやく終わりだと思ったら、また戦う。最初から最後までずっーーと戦い続けた。俺はなぜ、こんなにも戦っているんだ?そもそも俺の原点っていうのは‥‥家族との平穏な生活だったはずだ。
闇金からの取り立てもなく、両親が過労で亡くなることもなく、貧乏でイジメられることもなく。ただただ普通の生活を送ることが目的だったはずだ。
それなのに気がつけば、騎士に任命され、バカみたいに強い魔物と戦い、挙句の果てには殺し屋とまで戦っていた。こんな生活は俺が望んだものじゃない。もっと安心かつ平穏で、暇を持て余すぐらいの生活を望んでいた。
誰だよ。俺の生活をこんな地獄に変えた奴は。いや、そもそもだ。元の世界で俺があんな苦しい目にあったのはクソの神のせいだ。だから、今度は良い生活を送れるようにすると言っていたのに、こんなのは俺が望んだものじゃない!!
まただ。結局、同じなんだ。神から素晴らしい人生を与えられようとも俺の望みは叶うことがなく、俺はまた、死んだんだな。まぁ、あれだけ無理をすればそうなるよな。でも、これで戦わずに平穏な死後を楽しめるなら、それもそれでありか。
じゃあな。俺の第二の人生よ。もし次、生まれ変わることがあればもっと平和な世界で生まれることを望む。
―――完。(って書けたらいいんだけどね。まだ終わりません。)
目を開けると、見知らぬ天井が目に入った。
「って、あれ?俺‥‥まだ生きてるじゃん。」
てっきり死んだと思った。だって過去の記憶とかがハッキリと見えたから、死後の世界に行く前の人生の振り返り的なのかと思ったんだが、違ったんだ。
体を起こして周りを確認すると、そこは病室だった。部屋は完全個室で、昔に入院した病室とは違ってとても豪華な部屋で、絶対に一般人が入院するような部屋ではない。
あぁ‥‥こんな豪華な部屋を用意できる奴は一人しかいない。間違いなく咲だな。恐らくだけど、あいつをぶっ飛ばした後にそのまま気絶して、誰かに運ばれて‥‥今に至るっていった感じか。今、何日だ?そんな時間が経っている感じはしないが。
と、日にちが分かるものを探すが、そういった類の物は一切見つからなかった。持っていたスマホも身に着けていたスマートウォッチも見つからなかった。
まぁ、目覚めたわけだし‥‥とりあえず、外に出るか。
とベッドから降りると、上手く立つことが出来ずにその場に倒れてしまう。
あれ?足が‥‥上手く動かない。これって筋肉硬直って奴だよな。何日も同じ体勢にいるせいで筋肉が固まって動かなくなるってやつだ。ってことは、結構長いあいだ眠っていた。筋肉硬直って数日で起こるものか?
あれ‥‥何か、凄く雲行きが怪しい気がする。と思ったその時だった。病室の扉がガラガラと開き、そこに居たのは咲と雪だった。
二人の顔は驚きと安堵が入り混じった表情で固まっていた。
俺たち三人は目があった状態で数秒間静止した後に、俺の「お、おはよう」という言葉を合図に一斉に飛び込んできた。
自分一人で立つことも出来ない俺が、二人を受け止めることなど出来るはずもなく、その場に押し倒された。そして飛び込んできた咲と雪は俺の上でただただ泣き始めるのだった。
そんな二人の様子を見て、”かなり眠っていた”ことを確信するのだった。




