第72話 タッグマッチ⑳
《――スタジオ視点》
「しかし、今回の戦闘はどのペアを見ても見応えがありましたね。特に階層主に真っ向から勝負を挑み、見事勝利した東雲ペアは凄かったですよね~~会場の皆さんも見入っていましたからね。解説の神崎さんは、あの場面をどう見ましたか?」
「そうですね。主との戦闘は一つの油断で簡単に死に追い込まれてしまいますからね。一瞬たりとも油断をしてはいけない相手です。そんな強敵に東雲ペアは上手く戦ったと思いますよ。先頭に立って戦う悠真くんに、裏からのサポートに徹する東雲さんとバランスがよく、そして決定的な隙が生まれた瞬間に一気に踏み込むあの判断力は、本当に学生なのか?と疑いたくなります。日本の探索者の未来は明るいですね。」
「なるほど。確かに最後の一撃は見事でしたね。」
「えぇ。状況判断、距離の詰め方、そして決着のタイミング。どれを取っても非常に完成度の高い戦闘でしたね。」
「そしてもう一人、忘れてはいけないのが白河 雪さんですね。解説の神崎さん、この戦いぶりはどう見ましたか?」
「そうですね。流石は”氷姫”と呼ばれているだけはあります。魔法の発動スピードはもちろん、その威力も非常に高い。今回の戦闘でも、ほとんどの場面で主導権を握っていましたね。」
「確かに、映像を見ていても圧倒的な制圧力でしたし、その力はほとんどSランクと言っても過言ではないんじゃないですか?」
「そうですね。力や才能だけで言えばSランクに値すると言ってもいいです。ですが、Sランクはそれだけではなれないのが現実なんです。探索者に求められる全ての能力が基準を超えていなければ、本当の意味でSランクになるのは難しいでしょうね。」
「なるほど。それだけSランクという評価をもらうのは難しいというわけですね。」
「まぁ、そうですね。でも、彼女の力であればSランクは届かないかも知れませんが、絶対にAランクの評価は今でも貰えると思いますね。その証拠に、ほとんどの戦闘を一人で熟していたと言っても過言ではないでしょう。パートナーとして組んでいた探索者は、少し可哀想ではありましたが‥‥」
神崎は小さく肩をすくめる。
「とはいえ、探索者は実力の世界です。あれだけの力を持つ者と組めば、どうしても戦闘の主導権はそちらに寄りますからね。仕方のないことだと思います。」
「なるほど~~。いやぁ、それにしても”氷姫”の名に恥じない戦いぶりでしたね。」
「さぁ!!これにて本日のイベントは全て終了となりました!!参加した探索者の皆さん、本当にお疲れ様でした!!」
司会の言葉と共に、スタジオのモニターには本日の戦闘のハイライト映像が流れる。
「どのペアも非常に見応えのある戦いでしたが、その中でも特に輝いていたペアがいましたね。解説の神崎さん、今回のイベントを通して特に印象に残ったペアはどこでしょうか?」
「そうですね。全体的に非常にレベルの高い戦闘が多かったと思いますが、その中でもやはり印象に残ったのは――ですね。」
「なるほど~~。では、総勢100名を超える!!今回の栄えある優勝を手にしたのは、このペアです!!」
――大きな画面に優勝ペアの姿が映し出される。
◇
《――スタジオ裏視点》
「例の二人組からの連絡は?」
「‥‥ありません。どうやら失敗したようです。」
「そうか。まぁ、所詮は金で雇った紛いものだ。証拠は一切残すなよ。証拠がなければ言葉はただの妄言となる。」
「はい。分かりました。」
「東雲のガキを排除することは出来なかったが、邪魔をすることは出来た。今は、これで満足とするか。」
――男のその目には東雲家に対する恨みと憎しみだけがあり、奴らを苦しめることが出来るなら、この男はなんだってするつもりでいた。その憎しみは心の奥底にしまい、皆が待つスタジオへ向かうのであった。




