第71話 タッグマッチ⑲
《――悠真視点》
「‥‥どうだ?流石に終わっただろ。」
過去最高の一撃だった。タイミング、角度、距離、力の入れ時など、全ての要素が完璧に合うことで放てた一撃――まさに”会心の一撃”だった。
会心の一撃が決まった時点で俺は”勝利”を確信していた――が、奴はまだ倒れてはいなかった。
奴は足をふらつかせながらゆっくりと歩いてくる。
一撃で倒すことは出来なかったが、奴は限界だ!!休む時間を与えてはいけない‥‥押せば倒れる。次の一撃で倒すんだ!!
と俺は、さきほどと同じように姿勢を低くして走りだそうとした時だった。
ピコン!!と危機感知が発動した。すぐさま横にジャンプして何かを回避すると――ジャシュ!!と地面に何かで斬られたような跡が刻まれた。
あぶねぇ~~!!少しでも避けるのが遅かったら、完全に俺の体が斬られていた。
「ケホッ!!この攻撃も避けるか~~。本当にウザいスキルだなぁ~。」
奴は血を吐きながら話しかけてきた。
「‥‥これはお前のスキルか?」
「あぁ~~”斬撃”ってスキルだ。こんなことならよぉ~~最初から使っておけば良かったな~~俺も無駄な傷を負わなくて済んだからな~~じゃあ、死ねよなぁ~~!!斬撃~~!!」
奴が腕を振り下ろす。
すると、さきほどと同じように危機感知が発動し、横へと避ける。
「どれだけ逃げても無駄だよなぁ~~もう、お前は‥‥ケホッ!!へへっ~~逃げられねーからよ。斬撃!!斬撃!!斬撃!!」
奴は連続で見えない刃を飛ばしてくる。それを危機感知だけを頼りにして避けていくが、次第にきつくなってきた。
いくら飛んでくる場所が分かるといっても限界はある。このまま足を止めていたら、いつかやられる。だったら、ここで引くのではなく前へと進み出る。
奴は既に虫の息だ‥‥スキルを使えば使うほど、その体力は確実に削られていく。なら、もっとスキルを使わせる為に避けて、避けて、避けまくって‥‥小さくてもいいから‥‥ちょっとずつ前へと進む!!
悠真は小さくではあるが、見えない刃を避けながら前へと確実に進んでいた。敵も敵で、その進行を止める為により多くの斬撃を放つ。一撃ごとに体が悲鳴を上げ、奴の口から血が流れるが、それでも止まらなかった。
なぜなら、奴にとって痛みは快楽であったからだ。
自分が生きていることを痛みでしか実感することが出来ない。だからこそ戦いこそが奴にとっての生きる意味であり、勝利の暁には獲物を残虐な方法で殺すことを――最後の楽しみとしていた。
そこまで痛みに固執していた奴だが、心は痛みに耐えられても体は違う。最後の斬撃を放つと、奴の動きがピタリと止まった。
どれだけ痛みを好もうと、人間の構造は全ての傷に耐えられるようには出来ていない。奴の体は幾度のスキルの使用によって限界を迎えたのだ。
そして、悠真はこの隙を逃さなかった。素早く踏み込み、懐へ入り――がら空きの体へと”会心の一撃”を叩き込む。
鈍い衝撃音が響き、男の体がくの字に折れ曲がり男は吹っ飛び――そのまま地面へと倒れた。
この2対2の勝負は、悠真と雪の勝利で幕を閉じた。




