第68話 タッグマッチ⑯
《――雪視点》
この男は私と同じで”魔法使い”だ。
魔法使いの戦闘は魔力、属性の相性、発動の速さの三つで決まる。恐らく、魔力量は私の方がある。ただ、相手は対人戦のプロ。戦闘技術と経験はあっちの方が上と見るべき。なら、取るべき選択は‥‥技術を必要としない乱打戦。
私は即座に魔力を杖に込める。
「氷槍」
無数の氷の槍が作られて一斉に男に向かって飛んでいく。
一本一本の槍はそれほど大きくないので、当たっても然程のダメージを与えることは出来ないけど、塵も積もれば山となるのと同じで、小さなかすり傷も数が増えればしっかりとした傷になる。
「‥‥なかなかの量だな。一度の魔法でここまでの量を出せる奴は見たことがない。お前、相当な魔力量を持っているんだな。すごい才能だが‥‥無意味だな。」
男は手を空に上げてパチン!!と指パッチンを鳴らした。
すると、雪の氷の槍は一斉に砕け散った。これが、この男が持つ魔法で、その名も「ターン・ディスペル」という魔法を破壊する魔法だった。
「私の魔法が‥‥破壊された?もしかして‥‥魔法を破壊する魔法。」
「正解だ。俺の魔法は魔法を破壊する魔法だ。どんな「威力の高い魔法」も「広範囲の魔法」であっても、俺の前では等しく無意味だ。」
魔法を破壊する魔法。確かに強い魔法だとは思うけど、無敵とまでは思えない。どんな強い魔法にも必ず弱点は存在する。「無敵の魔法」はこの世に存在しない。
「‥‥無意味ね。じゃあ、試してみよう。本当に私の魔法が無意味かどうかね。」
再び杖に魔力を込めて、今度は氷の槍ではなく氷の兵士を作っていく。
「氷の兵士‥‥その名も氷兵よ。行きなさい!!」
私の声を合図に氷の兵士たちは一直線に走っていく。
男の持つ魔法にも何かしらの制限はある。全ての魔法を何の制限もなしに発動できるわけがない。例えば、「魔法を破壊できる距離」や「魔法の威力」や「一度に破壊できる数」と言った何かしらの制限は絶対にある。
まずは、それを見つけることから始める。最初に作った槍の数は20本で、今回の兵士の数はその倍の40体で私が一度に作れる限界の数を作った。もし、この数を一回の魔法で破壊できるのなら数という制限の線は消える。
氷の兵士たちは男の前までやってきた。その間、男は動くことなくずっと同じ場所に立ったままで、兵士が剣を振り上げたところで――パチンと全ての兵士が消えた。
「はぁ‥‥無意味だということが分からないのか?お前の魔法は俺には届かない。」
「私の魔法は届かない?まだ、私の魔法は終わっていないよ?氷槍。」
と先程の氷の槍とは違って20本の槍を集約した一本の槍を放った。槍は凄まじい速度で飛んで行き、一瞬で男の所にまで到着した。
男は姿勢を低くして避けた。
破壊するのではなく避けた。槍の速度は速くしたが破壊できないほどの速度は出していない。つまり、あの男の魔法は連発は出来ないということ、そして破壊することが出来る魔法にも距離の限界があるということが分かった。
もし仮に、全ての魔法を距離なしで破壊できるなら、兵士が作られた瞬間に破壊すればいい。でも、しなかった。それはクールタイムを警戒しての行為ではないだろう。私と男の距離はそれなりにある。この距離があればクールタイムも上がるはずだから‥‥距離の制限がある。
「破壊ではなく避けましたね。どうやら魔法は全て無意味ではないようですね。しっかりとした弱点があるじゃないですか。」
「‥‥このガキ。お前‥‥俺の魔法がこれで終わりだと思っているなら、勘違いだ。俺の魔法の本当の怖さを見せてやる!!」




