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『神の手違いが生んだ報われぬ者の転生録』  作者: Lark224a


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第67話 タッグマッチ⑮

「アハハハ!!女!!お前‥‥やるな。魔弾を動かせる奴なんて初めて見たぜ。育成出身の奴はカスばかりのイメージだったが、お前のような本物がいるなんて驚きだ。」


「お前が男と遊んでいるから‥‥ターゲットに逃げられただろうが?どうするつもりだ。」


「問題ないだろ。東雲の娘は頭は良いが戦う力はない。となれば魔物との戦闘を避けながら出口に向かうはずだ。なら、時間は全然ある。今はデザートの前のメインディッシュを楽しもうぜ。」


「確かにな。じゃあ俺は、女の方をやる。互いに遠距離だし。」


「‥‥少し不満はあるが。死にぞこない男の方でもいいか。」


雪の魔弾を食らっているはずなのに二人はピンピンしていた。


魔弾は確実に命中していた。なのに、全く効いている様子はない。当たる直前に防御をして防いだのか?いや、だとしても何かしらの痕跡はあっていいはずだ。


――と、なれば原因は『俺の手を砕いた男とは別の男』が何かしたに違いない。


「雪。魔弾は確実に当たっていたよな?」


「うん、間違いなく当たってはいるけど‥‥何か変な感じだった。」


「変な感じ?もっと具体的に言えるか?」


「ごめん、よく分からない。でも、1つ言えることは”何か”をしたってことだけ。まずは、その中身から探って行こう。私は左の奴を相手にするから、悠真は右の奴を相手にして‥‥それと、これ――」


――と雪から何か渡された。


「‥‥ポーション!!いいのか?高いだろ?」


「飲んで。悠真を失うわけには行かないし、その傷じゃあ満足に戦えないでしょ?」


「あぁ‥‥助かる。」


ポーションは体の傷を即座に治すことが出来る薬で、最上級ともなればどんな傷や病気でも治せると言われている。そのため、効力が一番低い物でも500万以上はするので高ランクの探索者でもなければ常備していない。


まさか雪がポーションを持っているなんて驚きだ。後で借りは返すとして、今は有難く使わせてもらおう。


ゴクゴクと飲むと、あれほど酷かった痛みは見る見るなくなっていき、砕かれた手もグーパーグーパーと問題なく動くようになった。


これなら問題なく行ける。


俺と雪が横並びになり、あいつらも同じように横に並び‥‥互いが互いの敵を見る。そして、開戦の狼煙が上がった。



《――咲視点》


――主を倒した。


その事実に、私は確かに安堵していたのだと思う。


悠真も限界を迎えていたし、私自身も天啓を何度も使ったことで、頭の奥が焼け付くように痛んでいた。だから、ほんの一瞬だけ気を抜いてしまった。


その瞬間だった。


危機感知を持たない私でも分かるほどの――明確な”死”を感じた。気付いた時には、既にナイフが目の前に迫っていて避けられない。


死を確信した時だった。目の前に氷の壁が展開されていた。


私は起こったことが理解できなかった。だから、また悠真が助けてくれたと思ったけど、違った。私たちを助けたのは悠真の幼馴染の「白河 雪」だった。


助かったという安堵よりも胸に込み上げて来たのは‥‥悔しさだった。悠真の横に立って一緒に戦うのは私のはずなのに、私は‥‥守られてばかりだった。


騎士である悠真が満身創痍になってまで戦い、最後は雪にまで助けられている。主である私が、守られる側でいることしか出来ていない‥‥完全に足手まといだった。


そして悠真からも「一人で逃げろ。」と言われた。


悠真のその言葉に、胸が締め付けられた。分かっている。誰よりも弱い私が残れば”足手まとい”になる。誰よりも私自身が理解している。


それでも「ダメよ。置いていけるわけがないわ。」と口から出た言葉は、感情に任せたものだった。


けれど、悠真はそれすら見透かしていた。膝枕をしていたのは、彼を休ませる為じゃない。私自身が動けなかったからだと。


――全て図星だった。


天啓を使い過ぎた代償で、思考は鈍り、足に力も入らない。今、戦闘になればまともに動くことは不可能だった。悠真の言う通り――私は、限界だった。


「ここは退け。それが取るべき主としての選択だ。」


その言葉に、何も言い返せなかった。主として、騎士を生かす選択をするべきなのに。私は今まで、騎士に守られる選択しかしていない。


「‥‥分かったわ。」


悔しさを押し殺して、頷く。ここで残ることは、勇敢ではなく――愚かだ。


だからせめて主として「絶対に戻ってきなさい。」それが、私に出来る唯一の命令だった。


悠真が走り出すのを見届けて、私は踵を返す。背後から、戦闘の音が響いて来る。逃げながらも、何度も振り返りそうになるのを必死に堪えた。


主として――ここで立ち止まるわけにはいかない。と歯を食いしばり、私は主の部屋を後にした。

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