第63話 タッグマッチ⑪
「しっかりしなさい。ここで負けることは許しません!!」
「わ‥‥分かってる。ちょっと、横になっただけ‥‥全然‥‥効いてない。」
「なら、さっさと立ちなさい。」
「あぁ、言われなくても‥‥そうする!!」
言葉では強気なことを言っているが、体は正直で既に限界だった。体を起こそうとするだけで、足は小鹿のようにブルブルと震えているし、壁に手を当てて支えがないと倒れてしまう。
それほどまでに、俺の体はボロボロだった。
たった一撃で‥‥既に瀕死だ。クソッ‥‥負けるわけには‥‥いかない。絶対に勝つんだ!!と強い気持ちだけで支えを外して、前に進んで改めてマンティコアと向かい合う。
「正直に言いなさいよ。戦えるのよね?」
「あぁ、戦える。やられた分‥‥しっかりとやり返してやる。咲は、後ろで天啓を常に発動して、奴の未来を見て俺に伝えてくれ。俺の危機感知と咲の天啓があれば、大抵の攻撃は避けられるはずだから。」
「分かったわ。武器は?剣は折られたようだけど。」
「ここに、あるだろ。」
と拳を見せる。
「元々、剣は練習で使っていただけで、こっちの方が扱いには慣れている。見てろよ‥‥俺の拳の威力を!!」
体のダメージは一切変わっていない。頭も脳震盪のせいでフラフラしている。既に満身創痍で動けていることがおかしい状態なのに、俺の体はいつも以上に軽くなっていた。
痛みは感じないし、世界がいつもよりクリアに見えている。自分の調子が最高の状態であることが分かった。
今なら魔王だって神だって倒せる気がするよ。さっきのように簡単に飛ばせるとは思わない方がいいぞ?今の俺はさっきの俺の100倍は強いからな!!
俺はマンティコアに向かって走り出した。さっきの攻撃で唯一ダメだったことは一撃で決めようと、戦う場所を地上では空中にしてしまったことだ。空中では相手の攻撃を避けることは出来ない。
つまり、一撃で殺せなかった場合は、反撃を必ず受けるということだ。だから、同じ失敗はしない。奴の固い皮膚がぶっ壊れるまで殴りまくる。
マンティコアとの距離をどんどん詰めていると、奴は姿勢を低くして俺の背丈に合わせて一直線になるように顔を構えた。
まさかこいつ!!
既に危機感知がビンビンに発動している。後ろに咲からも「ブレスよ!!」という言葉が聞こえて来た。
俺は方向を変えて奴を中心にぐるっと回るが、奴も俺と同じように体を動かして来るので、このままじゃあ避けることは出来ない。なら、あえて前に進むことにした。
回ることを止めてただ真っ直ぐに進む。すると、エネルギーが十分に溜まったのか奴は口を開けて、俺に向かってブレスを吐いた。
ビューーン!!と吐き出されたブレスが俺に向かって飛んでくる。当たれば間違いなく死ぬ攻撃であいつの決め技だ。
逆に言えばこの攻撃は奴にとってリスクで、ブレスは吐いている時は大きなスキになる。飛んでくるブレスに合わせて俺は足に力を溜めて地面を強く蹴った。体は前に加速されブレスをギリギリに避けることが出来た。
俺は前にコケながらも前に進み、奴の懐に飛び込んだ。そして、全力で奴の――腹を殴った。
マンティコアにみぞおちがあるかどうかは知らないが、流石に腹を殴られたら誰だって痛いよな!!さっきのお返しだよ!!
一撃だけじゃなく連打で攻撃をする。ドンドン!!と何発も殴って、最後は蹴り飛ばした。




