第62話 タッグマッチ⑩
――ゴオオォォォ!!と扉が開く。
俺達は周りを警戒しながらゆっくりと部屋の中に入っていくと――バタン!!と扉が閉まる。次にこの扉が開くときは俺達が主を倒して出てくる時だ。
命を懸けた本気の殺し合いが始まることに、流石に俺の心臓はいつもよりも脈打ち、心拍数が上がり額に薄っすらと汗が出ていた。
もう、引き返すことは出来ないと前に進むと、バン!!バン!!バン!!と部屋に明かりが灯った。
俺たちの目の前に現れたのは、胴体はライオンのような獣の体で、背中には悪魔のような翼が生え、尻尾は蛇のように長く、その先端はサソリの形をしていた。
その魔物はBランクで探索者をやっている者なら誰もが知っている「マンティコア」だった。
「‥‥マンティコアだと」
いくつもの魔物の特徴を持つ個体で、その弱点も組み合わさった魔物によって変わるため、戦い方も変えていく必要があるので戦うのが難しい。
なぜそんな魔物がBランクなのか。それは混合される魔物がゴブリンといった弱い魔物が混じることもあるので、そこからBランクになっている。
じゃあ、逆に混合された魔物が強い魔物であった場合は、間違いなくAランクだ。そして、今回の個体は見るからにハズレじゃない。
つまり、相手はBランクではなく――Aランクということになる。
俺は即座に身体強化を発動した。相手が何かして来る前に殺すことは出来なくとも、戦闘を有利にする為に全力全開で加速して斬りかかる。
身体強化での全力全開の一刀は、Cランク魔物であれば両断するほどの力と速度がある。あのマンティコアであったとしても、この一刀を受けて無傷で済むはずがない。
――と、胴と首を飛ばす勢いで剣を振るった。
ガキン!!と両断されたのはマンティコアの首ではなく、俺の剣だった。剣はマンティコアの固い皮膚に耐えることが出来ずに根本から砕け折れてしまった。
そして、斬りかかった俺も空中で大きな隙を作ってしまい、ガードする為の剣を失ったことでガードも出来ずにマンティコアの尻尾の振り払いをくらってしまう。
その衝撃は今まで食らったどの攻撃よりも重く、当たった瞬間、体がバラバラになったかと錯覚を覚えるほどの威力があり、体が宙を舞い壁に一直線に飛んで行った。
「ゲホォ!!」
――と大量の血を吐き出した。
‥‥何て威力だ。身体強化でのパワーアップと、ここまでで得たステータスが無かったら、確実に死んでた。はぁ‥‥はぁ‥‥どうする?俺の全力の一撃は奴の固い皮膚には通じない。皮膚が薄い場所を探して攻撃するしかないが‥‥剣が折れた。
俺に残された武器は‥‥この拳だけだ。いや、拳で充分だ。剣の攻撃が通じなかった時点で、あの剣に価値はない。なら、剣より威力が伝わる拳で戦った方が‥‥勝機は‥‥ある。
だんだん思考が緩くなり、何も考えられなくなっていた。恐らく壁にぶつかった時に頭を酷く揺らしたのだろう。重度の脳震盪を起こしているせいで、考えることはもちろん体も動かせなくなっていた。
このままじゃあ‥‥落ちる。
どうにかして意識をハッキリさせたいが、体が動かないので‥‥どうすることもできない。俺はゆっくりと閉じていく瞼に必死の抵抗で耐えるが、その抵抗も虚しく瞼が閉じてしまう。
その刹那だった――バチン!!と右頬に衝撃を感じた。
「起きなさい!!悠真!!」
咲から復活のビンタをもらい、意識を取り戻すのだった。




