第60話 タッグマッチ⑧
逃げようとする二人の男を追いかけようとしたが、瞬きの間に何処かへと消えた。
あいつらは一体何だったんだ。狙いは、間違いなく咲だった。ってなると、東雲家に恨みや妬みを持っている人間の仕業だと考えるのが妥当だ。これは突発的な行為ではなく、事前に作戦を決めての計画的な犯行と考えるべきだろう。
なぜなら、あいつらはカメラの巡回ルートと時間を正確に把握していたし、俺達の居場所もピンポイントで狙ってきたことから、運営側かイベントのスポンサーの中に協力者がいるのだろう。
なら、俺達が参加することも計算に入っていた?いや、それだと校長が裏切り者の最有力候補になってしまう‥‥それは流石に考えたくない。
ともかくだ。咲の命が狙われている以上、イベントの継続は不可能と見るべきだな。
考えをまとめたので伝えようとした時だった。俺が言葉を発するよりも前に「リタイアはしないわよ。」と先に答えを言ってきた。
「はぁ??どうしてだ。この状況だぞ?この状況でまともにイベントが続けられると思っているのか?万が一これが表に出れば、日常生活はもちろん探索者の活動も自粛せざるを得なくなるんだぞ?それを分かっているのか?」
「もちろんよ。でも――それでもよ。このイベントは何が何でも優勝しなくちゃいけないの。」
「何で、そこまでしてこのイベントに拘る?別に地位を示すだけなら違う場所でも問題ないはずだ。なのに、命まで懸けて参加する理由は何処にある?」
「だからよ。東雲家を継ぐ者は”幾度となく命を狙われる”宿命なのよ。それは、私のお父様も、御祖父様も、その先代も家督を継いだ者の宿命なのよ。
これは私の予想だけど、このイベントはただのイベントではなく‥‥悠真へのテストよ。」
「‥‥テストだと?」
「うん。主の命の危機を迎えたときに対処できるのかのテストよ。」
「だったら尚のこと逃げることの方がいいだろ。この場で一番大事なのは”咲の命”なんだから。」
「そうね。逃げられる状況ならそれがベストだと思うわ。でも、逃げられない場面に出会った時は?絶対に戦わないといけない状態だったら?その時に騎士が主を守れる保証は?」
「それは‥‥。」
「そう、無いのよ。だから、このイベントで戦えるところを示す必要がある。このテストは逃げるテストではなく戦うテストなのよ。リタイアしてしまったらテストはもちろん不合格となるわ‥‥どうする?」
「大前提として、今言った話が合っているという確証がないが、間違っているという確証もない。なら、合っていようが間違っていようが‥‥どちらも正解が取れるようにしておくのがベストだと思う。
それは、あの二人を撃退して‥‥このイベントで優勝することだけだ。」
「そうね。それしかないわね。じゃあ、先へと進みましょう。少し出遅れているわ。」
「あぁ‥‥本当にメンドクサイことになったよ。なら、この話を持ってきた校長もグルだって考える方が丸いか?」
「でしょうね。あの二人が来たタイミングとルールの熟知具合から見ても、イベント関係者との繋がりを持っているのは確実でしょうね。」
「だな。なら二人は雇われた傭兵とかか?まさか、本物を雇っているみたいなことはないよな?」
「うーーん、否定はできませんね。お父様も御爺様も何処か頭がいかれていますから、本物を雇う可能性もゼロとは言えないわ。」
「はは‥‥いかれ過ぎだろ。実の娘に本物の暗殺者を雇うとか‥‥普通じゃないな。」
「本当にその通りです‥‥私達は普通じゃないです。」
――と事の中身を話しながら次の魔物を探すのだった。




