第57話 タッグマッチ⑤
俺は咲に目配せをして“準備は整っているか”と合図を出すと――コクンと頷いたので、鉄剣を抜いて戦闘の準備を整えた。
「‥‥行くぞ。」
と魔物に向かって走り出した。
通路は狭く、数歩で鉄剣の間合いに入ったので、手前の一体がこちらに気付くよりも先に右腕を狙って剣を振り下ろした。
‥‥やれる!!取った!!
そう思った瞬間――ガキンッ!と金属音が鳴り響いた。
俺の完璧な不意打ちの一撃は、左手の小型盾で受け止められた。ガチガチと剣と盾での押し合いになり、足に力を入れて全身の力を使ってそのまま押し切って斬ろうとするが、力は完全に拮抗していて微動だにしない。
「ぐッ‥‥!!」
こいつ、見た目から暗殺系の魔物かと思ったけど全然フィジカル系じゃねーか。とんだ嘘つきだ!!このまま押し合いを続けたら、こっちの剣が先にダメになる。
「‥‥チッ!」
舌打ちをして、相手との距離を取る為に軽くバックステップをして空間を作り、盾を踏み台にして、そのままバク宙で距離を取った。
今の一撃で一体は絶対に殺したかった。
咲の能力を考えれば任せられて一体が限界だ。だから、俺が出来るだけ早く一体を処理して咲の援護に向かう必要があったのに‥‥2対1じゃあ簡単には決めさせてもらえないだろうな。
と、思考をしている時だった。危機感知が何の前触れもなく発動した。
俺は咄嗟に反応した方へ剣を出すと、カキン!!と何かを弾いた。
「悠真!!」
と後ろから咲の心配する声が聞こえてきたので、俺は急いでその場から下がって咲の所へと戻った。
「‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥今のは一体何だ?咲からは見えた?」
「ちゃんとは見えなかったけど、後ろの魔物がほんの一瞬だけ光った気がするわ。」
「なるほど。剣で弾いた時もそんなに重さは感じなかったから、多分だけど“針”だと思う。しかも、ただの針じゃなくて“毒針”の可能性が高い。」
「どうする?どうやって倒す?」
「咲‥‥例の天啓は出来るか?」
「‥‥分かった。練習ではちゃんと出来なかったけど‥‥成功させるしかないよね――集中する。」
俺は咲の前に立った。その姿は主人を守る騎士そのものであった。
何か、初めてだな。こうしてちゃんと騎士として役割を熟すのは。照れくさい感じもするけど、今はかなりしっくり来ている。
咲の準備が終わるまでの間‥‥魔物の攻撃から咲を守る。それが、俺の役目だ!!
俺は初めて戦闘で“身体強化”を発動させた。いつもならステータスだけで戦っていたが、今回の相手はこの力を使うだけの相手だ。
体の奥から凄まじいぐらいの力が湧いてきた。自分の体が自分の体じゃないみたいに軽くなったのが分かった。俺は自分の力の高鳴りを感じてニヤリと笑みを浮かべた。
俺は魔物に向かって走り出すと、魔物も俺に向かって走り出して――空中で4人がぶつかり合った。
こっからが第2ラウンドの始まりの合図だった。




