第54話 タッグマッチ②
「二人とも、少し落ち着こう。分かった?」
二人を連れ出して宥めようとするが、二人は互いを睨み合っていて、俺の話など全く聞いていなかった。
何で、こんなことになるかな。まさか雪がこの場にいるなんて思いもしなかったが、あの能力なら選ばれてもおかしくはないし、寧ろ妥当な人選だと言える。
「それで雪も、このイベントに参加するんだよね?」
「うん!!悠真が参加するって聞いたから、私も参加しようと思ったの!!ところで何だけど、悠真がこの女の騎士になったって聞いたんだけど、何かの間違いだよね?悠真が他の女の騎士になるなんて、あり得ないよね?」
「えっーーと‥‥ね。それは――」
と俺が答えようとすると、「何も間違ってないわ。」と咲が横やりを入れてきた。
「悠真は、この私の『東雲 咲の騎士』になったのよ。残念だったわね。既に、悠真は私の物になったのよ。」
「君の物にはなってないよ。」
とツッコミを入れるが、当然のように咲は無視をする。そして、咲の言葉を聞いた雪は、咲に負けじと言葉を発する。
「あんたみたいなボンボンは、お金でしか相手を買うことしか出来ないからね。それに比べて私は、生まれた時から悠真と一緒だったし、幼馴染として通じ合っているの。だから、こうして別の道を行ったとしても、必ず結びつく運命なのよ!!悠真と私は運命の赤い糸で結ばれてるの。残念でした。」
「赤い糸で結ばれてはいないかな。それに、生まれてからずっと一緒にいるわけじゃないし、たまたま両親同士が知り合いだっただけなんだけどね。」
と雪に対して同じようにツッコミを入れるが、もちろん雪も俺の言葉は聞いておらず、二人のバトルはさらにヒートアップしていった。
もう手の施しようがなくなり、二人のバトルが最高潮に達した時だった。
「このまま口で争っていても、何も決まらないわ。だから、こうしましょ。このイベントで私達が勝ったら、悠真は私の物よ。でも、あなたが勝てば、悠真はあなたの物よ。これでどうかしら?」
「それ、本気で言ってるの?私、これでも育成の首席なんだけど?それを踏まえた上でいいなら、その勝負でいいよ。」
「えぇ、それで構わないわ。どの道、私達が優勝するのだから、誰が相手でも問題ないわ。」
「へぇ~~一般の生徒が大きく出るね。あなたは人としては優秀なのかも知れないけど、探索者としては私の方が100倍は優秀ってところを見せてあげる。
それは悠真だよ?私が、ここでどれだけ成長して強くなったのかを教えてあげる。そして、このイベントで優勝して、悠真を手に入れる。待っててね‥‥悠真。」
と言い残して、雪はその場を去って行った。そして咲も「絶対、勝つわよ。」と会場へと戻って行った。
そして、その場に一人残された俺は――完全に置いてけぼりとなった。
何で‥‥何で‥‥こうなったんだ?俺の話が全く聞いてもらえてない。なぜ、俺が二人の景品になっているんだ?拒否権はないのか?はぁ‥‥ダルい。
咲は前からこんな感じだったが、雪のあの変わり様は一体何なんだ?子供の時から俺に対してベッタリだったのは覚えているが、ここまでは酷くなかったぞ。俺と別れてから、雪に一体何があったんだ。
それに、首席だと言っていた。つまり、あれからさらに訓練を重ねて、独力で強くなったってことだよな。俺はこのイベントは、咲が成長すれば簡単に優勝出来ると思っていたが、さらに強くなった雪が相手になれば‥‥その優勝も確定とは言えない。
「はぁ‥‥本当に、何でこんなことになったんだ。」
と、俺の独り言は空へと消えていった。




