第52話 特訓開始。《後編》
「ふぅ~~はぁ‥‥これで全部よ。」
咲が見つけた魔物は全部で6ヶ所で、見つけた魔物の種類はバラバラだったことから、特定の魔物だけというわけではない。そして、天啓が発動する距離はだいたい500mぐらいであることが分かった。
十分、強い能力だと言える。発動範囲だけがちょっとネックではあるが、それもスキルのレベルを上げれば広がるかも知れないから、育てる価値は全然ある。
もちろん、メリットばかりじゃない。デメリットとして、6回の天啓は咲の精神に相当な負担が掛かることも分かった。使い所は慎重に選ぶ必要があるな。
「お疲れ、咲。これを飲んで休んでな。」
「ありがとう。」
「じゃあ、この近くには魔物はいないことは分かったから、俺は咲が見つけた魔物を狩ってくるよ。」
「ま、待ちなさい。はぁ‥‥私も‥‥行くわ。」
「いや、流石に今の咲を連れては行けない。すぐに戻ってくるから、そこで待ってな。」
「はぁ‥‥分かった。気を付けて行きなさいね。」
――コクンと頷いてその場を離れ、6ヶ所の魔物がいる場所へと向かう。
さて、久しぶりの一人での戦闘だ。正直、ここ最近は自由に戦闘出来ずにいたから、少しだけフラストレーションが溜まっていたんだよな。今日は思う存分‥‥自由にやらせてもらう。
戦闘が始まる前に、現状の俺のステータスを見せておこう。
白瀬 悠真 12歳 Lv42
体力 642
筋力 624
魔力 614
速さ 598
頭脳 734
魅力 52
精神力 744
運 60
・スキル
鑑定Lv5・身体強化Lv3・探知Lv2・自然治癒・速読Lv3・言語理解Lv3・潜伏Lv2・New危機感知
・称号
『静かなる暗殺者』
と、変化していた。流石に騎士になって一ヶ月、ほぼ毎日ダンジョンに潜っていたから、ステータスもその分上がっている。そして、新しいスキルとして「危機感知」を手に入れていた。
このスキルは、その名前の通り危険を教えてくれるスキルで、咲を守りながら常に警戒していたから身に付いたスキルだ。正直、戦いではかなり優秀なスキルである。
と、そうこうしている内に最初の場所に着いた。一ヶ所目は、一番最初に見つけた「エリートゴブリン6体」だ。
「さてと。咲に訓練と言っているわけだから、俺もただ倒すだけじゃ訓練にならない。だから、今日は少し戦い方を変えて『剣』を使ってみるか。」
その剣は加藤さんに見繕ってもらった「ただの鉄剣」で、エリートゴブリンと戦うには少し心許ない武器ではあるが、戦闘は武器の良し悪しで決まるのではなく、使っている者の技量で変わるんだということを教えてやる。
俺はエリートゴブリンの前に立ち、あえて姿をばらして、ゆっくりと近づいて鉄剣を抜いた。
◇
――キンッ!!――カンッ!!と火花が飛び散る。
流石はエリートゴブリンだな。こうして正面から戦うことで、その力が普通のゴブリンとはまるで違うことが分かる。それに、剣の扱いの難しさも相まって、攻撃のテンポがズレ、致命傷を与えられない。
「もどかしいなぁ!!」
でも、だんだんと慣れて来てる‥‥次は完璧に出来る!!
エリートゴブリンの攻撃に合わせて剣を振り下ろした――ガキン!!と再び火花が散る。さっきまでは俺が力負けをして後ろへと仰け反る感じだったが、今度はエリートゴブリンが後ろへと仰け反った。
理由は簡単で、ガードの「タイミング」を完璧に掴んだのだ。さっきまでは力でどうにかしようとして、全くタイミングが取れていなかったが、今回はベストタイミングで剣で弾くことで、相手が後ろへと仰け反ることになった。
そして、こっちは完全に次の攻撃の準備を既に完了させていた。「守りから攻撃への転換」は、既に体が覚えている。エリートゴブリンの体は後ろへと仰け反っていて、俺の攻撃を止める手はなく――紫色の鮮血が宙を舞った。
エリートゴブリンを倒すと、背後から「ビリビリ」としたものを感じ取った。このビリビリが「危機感知」だ。
俺はすぐさま前転してその場を離脱すると、グサッと紙一重のタイミングで、エリートゴブリンのダガーの攻撃を避けた。そして、すぐさま地面に刺さったダガーを蹴り飛ばした。
武器を飛ばされたことに気を取られたエリートゴブリンは、大きなスキを作ってしまった。もちろん、そんなスキを逃すわけがないので――グシャッと剣を突き刺した。
こうして、全てのエリートゴブリンを剣で倒すことができた。剣での戦闘は良い学びがあった。特に、剣という体には無いものを扱う難しさは、良い体験となった。
俺はエリートゴブリンの魔石を回収して、次の場所へと向かうのであった。




