第51話 特訓開始。《前編》
タッグマッチへの参加が決まった以上、俺達のやることは一つで、特訓するしかない。というわけで、特訓するとなると来る場所は、もちろん『ダンジョン』だ。
今回の特訓の舞台になるのは「10層」だ。
「今日は10層なのね。いつもなら13、14、15層辺りで探索するのに。どうして今日は10層なの?」
「その理由を話す前に聞きたいことがある。タッグマッチがどういうルールで行われるのか、運営側以外は知らない。これは合ってるんだよね?」
「えぇ、そうよ。毎年、ルールは始まる前に通達されるわ。そして、同じルールが使われたことは一度もないわ。今、分かっていることは場所だけね。場所は渋谷ダンジョンと決まっているわ。」
「よし、なら大丈夫だ。ルールが事前に分からないなら、細かい作戦や戦術は役に立たない。だから、このイベントで求められるのは『どんな状況であっても冷静に対応する対応力』と、『即座に結果を出すアドリブ力』だ。
そして、それらを成長させるには『素の力』と『タッグの連携力』が必要不可欠だ。」
「そうね。それは私も思うわ。どんな試験の内容でも、二人の力を合わせることが一番重要だと思うわ。」
「そう。それらを限られた時間で鍛えるのは難しい。俺達の関係は一ヶ月程度だが、他の出場者は俺達とは違って、長い時間を掛けて連携を学んでいる。探索者として、パーティーの連携は絶対に必要だからな。
ってなると、連携力で勝ちに行くのは勝率が悪い。なら、どうするか。答えは簡単で、素の力を鍛えまくるしかない。純粋な力と力のぶつかり合いなら、相手が二人であっても俺が――勝つ。」
「なるほど、悠真が言いたいことは何となく分かったわ。純粋な力勝負で勝つなら、後はどうやってその場面を作るかが問題ということね。」
「そう。相手は訓練を受けている探索者の卵だ。相手をどうやって、こっちの土俵に乗せるのかが一番の問題。そして、その問題の解決方法は‥‥。」
「私の――天啓ね。」
「正解。咲の天啓のレベルが上がって、もっと細かいことや、複数の天啓を得ることが出来たら、それを使って誘導することも出来る。だから、この10層に来た。
10層の魔物なら、戦闘になってもかなりの余裕があるから、安全にスキルを伸ばすことが出来る。」
「そういうことね。分かったわ。その案で行きましょう。じゃあ、私は天啓を使うわね。」
「うん。今、この場で欲しい天啓は『敵の居場所』だ。それを、狙って出すんだ。」
「やってみるわ。」
◇
咲は目を瞑って、全神経を研ぎ澄まして集中しだした。
天啓とは『神からのお告げみたいなものなので、狙って欲しいことを聞き出すことは出来ない』と言われているが、俺はそれは嘘だと思っている。
なぜなら、天啓は神からのお告げではなく、『第六感』のような物だと思っているからだ。全ての感覚が研ぎ澄まされ、集中力が高まった時に、その感覚が目覚めることで天啓を得ている。
それなら、鍛えて自分で天啓を得ることは可能だし、スキルのレベルが上がることにも納得がいく。神のお告げなど、バカの考えだ。
すると、咲が
「見つけたわ!!この先を真っ直ぐ200m進んで、右に曲がった所にDランクのエリート・ゴブリンが4体いるわ」
と敵を発見した。
俺はマップに印を付けた。
「よし、次だ。」
「うん、分かった。今度はもっと速く見つけるわ。」
と、咲は再び目を瞑って、集中力を高めていった。




