第50話 side②雪。
探索者育成学校に通い始めてそれなりに時間が経ち、私は“中等部”に進学した。
探索者育成学校には進学のテストがあって、それを突破しなければ進学することが出来ない。テスト内容は学力を測る為の筆記試験と、教員との一対一の実技試験で、その結果から判断される。
そして、私の成績は一位だった。筆記試験は満点で、教員との一対一も、唯一私だけが教員を倒して突破した。私はずっーーと、努力してきた。みんなが遊んでいる時も机に向かって勉強をしたし、少しでも能力が上がるように訓練もしてきた。
それも、全て一番を取るためだった。
私がここまで一番に拘ったのは母の為でもあったけど、本当の目的は別にある。中学生になれば“悠真”もこの学校に来ると思っていた。だって、悠真は私よりも強いから。
だから、私は悠真がこの中等部に来ても遅れを取らないように努力してきたのに‥‥悠真の名前は新入生にはなかった。
そう、悠真は探索者の道を取らなかった。
なんで!?悠真がいないの??と私は何度も何度も新入生の名簿を見たけど、その名前は何処にもなく、私は新入生代表として挨拶をして、また楽しくない日々が始まった。
悠真が探索者の道を取らなかったと知った私は大きな目的を失い、あれだけ頑張って来た勉強も訓練もやらなくなってしまい、完全に足を止めてしまった。
日々の授業にも身が入らない。先生からも「集中しろ」と怒られる。でも、無理だった。だって、私には探索者として進む意味がない。
今は、交じり合うことがなく別々の道を行っていたとしても、何処かで交じり合うと思っていたし、向かっている場所は同じだと思っていたのに、そう思っていたのは私だけだった。
そんな日々にも限界を感じて『やめようかな』と思いかけていた時だった。
私の面倒を一番見てくれていた教員の一人が、あるイベントのチラシを持ってきた。そのチラシには『探索者タッグマッチ――未来の日本を支える探索者を発掘しよう!!』という探索者のイベントが載っていた。
「最近、お前が何かに悩んでいるのは知っている。他の先生達からも『授業に身が入っていない』という報告も聞いている。お前に何かしらの心境の変化があってのことだと思うから、無理に話せとは言わない。
だから、少しその心境を変える為にも出てみないか?このイベントは毎年行われているイベントで、他の育成学校からも実力者が出場するし、自分の力を試す場にもなる。どうだ?」
必死になって私の為にやってくれている。だけど、私には――もう、それに応えられる気持ちがないんです。
「‥‥私は‥‥出たくないです。」
と拒否した。すると教員は椅子に深く座り直して話し始めた。
「はぁ‥‥。今年のイベントには、あの東雲グループの次期当主の『東雲 咲』も出場する。しかも、東雲 咲が自ら任命した騎士を連れてだ。名前は‥‥確か‥‥白瀬 悠真だったか。お前なら勝てると思ったんだがな。」
え?今‥‥悠真って‥‥。と、聞こえるはずのない名前を耳にして顔を上げた。
「え?ま、待ってください!!今、悠真って言いました?」
「お、おう。そうだ。東雲 咲の騎士は白瀬悠真という人間だ。」
「で、出ます!!何があっても、それに出ますッ!!」
「お、おおおお!!そうか!!考え直してくれたか!!なら、ペアはどうする?」
「誰でもいいです!!」
「お、おう‥‥そうか。なら、こっちで見つけておく。これでいい結果を出せば、今までの評価だって元に戻るだろう。いいな!!絶対に結果を出すんだ!!じゃあ、俺は色々と準備をしてくる!!」
と言って部屋を出て行った。そして部屋に一人残った私は、チラシを強く抱きしめていた。
「やっと会える!!たくさん話したいことがあるの!!悠真‥‥悠真‥‥悠真‥‥」
と、私の頭の中にあるのは悠真のことだけだった。




