第49話 父の思惑。
学校が終わり、俺と咲は例のイベントについて話す為に喫茶店へと来ていた。
「で、どうする?タッグマッチ。」
「どうするこうするもないわ。狙うは‥‥優勝よ。」
その言葉を聞いて俺はリアルに首をガクンと折った。
こいつは本当にどこまでもだな‥‥相手を考えてから言ってくれ。
「それ、まじで言ってるのか?相手は探索者になる為の訓練を受けている、探索者のエリートみたいな相手だぞ?本気で優勝を目指すのか?」
「当然よ。むしろ優勝を狙わない方がおかしいわ。だって、考えてもみなさい。私達が出るということは、私は“東雲家次期当主”として、あなたは“東雲家次期当主の騎士”として試合に出ることになるのよ?そんな大きな看板を背負って、不甲斐ない結果なんて見せられるわけがないでしょ。」
「それは‥‥そうだが。でも、現実的に優勝は難しくないか?」
「ふふ‥‥それが良いんじゃない。難しければ難しいほど、突破した時に得られる物は大きくなるよね。今回のこのイベントで結果を残せば‥‥確実に一歩先に進めるわ。
あなたも私の父に「最高の騎士」になると言い切ってしまった以上、こういう公の場で示すのは良い手立てだとは思わない?」
「はぁ‥‥分かった。咲の言う通りだ。出るからには結果を残そう。」
「そうね。ならイベントまでの期間はどうします?」
「もちろん鍛えるに決まってる。ってか、俺の実力と能力があれば、他の育成学校の奴らには引けを取らない。俺がずっと厳しいとか無理とか言うのは咲だよ。咲の能力が、どう考えても戦闘向きじゃないから無理と言っている。
だけど、咲がそこまで優勝を重く捉えているなら話は変わる。あれだけ言ったんだ、優勝する為にそれなりの訓練は受けてもらう。覚悟は出来てる?」
「えぇ、もちろん。悠真に言われなくても、自分の能力が足りていないことぐらい分かっていますよ。でも、それを鍛えるのも騎士としての仕事ですからね?」
「あぁ‥‥任せろ。イベントまでの一ヶ月半で戦えるようにする。」
――と、この日から俺達はタッグマッチで優勝を目指して、訓練を始めた。
◇
「源蔵よ。お主の言う通り、二人を参加させたぞ。これで満足か?」
「はい、お父さん。本当に感謝しています。」
「しかし、あの二人にとってはこのイベントはかなり厳しい物になるんじゃないのか?相手は未来の日本を代表する探索者の卵ばかりじゃ。悠真はやれるかも知れんが、咲にはちと厳しいと思うがなぁ。」
「だからですよ。悠真くんが探索者の才能を持っていることは知っていますし、その才能に驕ることなく努力していることも知っていますが、それだけでは、まだ、足りません。
彼は、私に「最高の騎士」になると言ったんです。それに至るには、実力だけでは足りません。他の全てが求められる。当然、その騎士の主である咲にも、同じことが言えます。
だからこその、この試練です。これぐらい軽々と突破してくれないと、誰も認めてはくれませんから。」
「ほほっ‥‥本当に、その性格は誰に似たのやら。まぁ、お主の好きにせい。ワシは既に一線から身を引いたからの~~ゆっくり、余生を楽しまさせてもらうわい。」
「はい。ごゆっくりと見て行ってください。私達の『東雲家』を。」
――とプツンと電話が切れた。
さて、白瀬悠真くん。そして咲よ‥‥お前達の成長を見せてくれ。




