第46話 最高の誓い。
「で、君が咲が選んだ騎士の‥‥白瀬 悠真くんか。」
先程の、娘に土下座をしていた人とは思えないほどの貫禄とオーラが出ていた。この姿が、東雲家の当主としての本来の姿なのだろう。だからこそ、余計に思ってしまう。さっきまでの姿は一体何だったのかと。
「はい、そうです。正直、自分が選ばれたことについては‥‥いまだに納得出来ていません。あの東雲グループの財力と権力があれば、自分より強い人を騎士にすることも可能だと思っています。」
「それはつまり‥‥咲の騎士を辞めたいと思っているのかい?」
「率直に申し上げると――そうです。やっぱり、この騎士という責任のある立場は、荷が重いと思っています。」
「なるほど。君の言い分はよく分かった。だから、言おう。君を咲の騎士から外すことは出来ない。」
「え?そ、それは一体何故でしょうか?自分は年齢・実力で見ても、まだまだです。娘さんもそうですが、そんな自分に固執するでしょうか?」
「私は別に君に固執しているわけではない。私が信じ、固執しているのは娘だ。東雲家を継ぐ者として、大切な我が子として、時に優しく、時に厳しく育てて来た。その娘が、君を騎士にしたいと言ってきた。
もちろん、私だけの意見で全てを決めることが出来るなら、君を騎士にすることなど認めないさ。
だが、それを言ってきたのが、自分の娘自身なら話は変わる。私が大切に育てた娘が、自分の目を信じて選んだ騎士なら、信じるほかないだろう。
白瀬 悠真くん。君は『年齢・実力が足りていない』と言ったな。だが、私から言わせれば『現状など』どうでもいいことだ。
大切なのは、今でも過去でもなく未来だ。五年後、十年後に誰よりも強くなっていれば良いのだ。
そうなれば、娘の人を見る目が正しかったと証明されることになる。だから、私は『白瀬 悠真』に大いに期待している。私の娘が選んだ騎士は、最高の騎士になると信じている。
これからの君の活躍を信じている。よろしく頼むよ――『未来の最高の騎士』。」
咲の父親は席を立ち、俺に向かって手を差し出してきた。
「‥‥本当に‥‥そんな風に言われたら‥‥逃げられないじゃないですか。」
俺も同じように席を立ち、その差し出された手をガチッと握り返した。こうして挨拶は幕を閉じ――部屋を出た俺と咲は、二人で会話を始める。
◇
「ふふ‥‥逃げられなかったわね。」
「君‥‥こうなるって分かっていたでしょ?俺の逃げ道を、完全に無くす為に。」
「そうよ。私の父なら、ああ言うと分かっていた。私の父ですもの。その先の展開がどうなるかくらい、予想出来ますわ。」
「本当に君達二人は良い親子で‥‥良い意味で似ているよ。」
そして俺は、その場で足を止めて「はぁ‥‥」と一息吐いてから、真剣な顔を作り、その場に膝を折った。
「あの手を取ってしまった以上、俺が騎士から逃げることはない。あの重い約束を果たす為に全力で努力し、五年後、十年後に君――『東雲 咲』の最高の騎士になることを‥‥誓おう。」
「やっと覚悟を決めたのね。えぇ、あなたならきっとなれるわ『最高の騎士』。私も、そんな騎士に負けないように、これからも努力するわ。勉強・政治・ダンジョン、全てを出来るようになって『最高の主』になることを、ここに――誓います。」
こうして俺達は、共に誓い合ったことで、仕方なくではなく、自分達の意思で互いの主・騎士の関係を作るのであった。




