第43話 明確の恐怖。
「異世界帰りの錬金術師は、祈る彼女と契約関係を交わして――世界を救う。」
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「ふぅ~~明らかに強くなっているな。」
目の前には死体になったハイ・ゴブリンが灰となって消え、その場には魔石が二つ落ちていた。
ドロップ品はEランクの魔石が二つか。相手はゴブリンだからな。ドロップ品に期待はしていないが、素材の方が魔石より高く売れるから、そっちを落として欲しかった。まぁ‥‥いい。
俺は魔石を拾って咲の元に戻った。
「おかえり。これ‥‥さっきの魔物のドロップ品よ。」
戻って来た俺に、咲は一番最初に倒したハイ・ゴブリンのドロップ品を渡してきた。その中身はこっちと同じで魔石だった。
「ありがとう」
そう言って受け取り、「で、行けそうか?」と尋ねた。
流石に一度確認しておかないといけない。咲も分かったはずだ。1~5層は探索者ではチュートリアルと言われており、6層からが本当の探索が始まる。
チュートリアルを楽勝でクリアした探索者が余裕を出して6層に入り、怪我をする者が一番多い。ダンジョンでは油断は絶対にしてはいけない。常に最悪の想定をして行動することが求められる。
咲も油断まではしていなかったとは思うが、それでも心のどこかでは大丈夫だと考えていたはずだ。だから、6層を見ずに“行ける”と言ってきた。
だが、こうしてダンジョンの恐怖を見せることで、咲の考えも変わったはずだ。
「そうね‥‥流石に少し怖かったわ。ここがダンジョンだっていうことを教えられたわ。」
「そうだな。ダンジョンは本当に危険だ。俺が守ってやれると言っても、それは絶対じゃない。だから、もう少し下の層で力を付けてからでもいいだろ。この層に来るのはまだ‥‥早かったな。」
咲はしっかりとダンジョンの恐怖を学んだ。それだけでも、この探索に収穫はあったと言える。
なぜなら、今日感じたこの恐怖を皮切りに、ダンジョンから離れる可能性がある。そうなれば、俺の自由な探索が戻ってくるが――まぁ、こっちは期待しないでおこう。そんなにメンタルが弱い人間じゃないからな。
と、下の層に戻るための移動を始めようとした時、「待って!!」と静止の言葉が入った。
「ん?どうした‥‥?」
「進む方向を間違えているわよ。私達が進むべきはこっちでしょ?」
そう言って、後ろではなく前を指差した。
「いやいや。まだ分かってないの?さっきゴブリンを見ただろ?あれは俺が臨機応変に対応したから無傷で済んだだけで、次もそう上手くいく保証はないんだぞ。いい加減‥‥引くことを覚えろ。」
「もちろん分かっているわ。私がさっき感じたあの恐怖は、きっと死に対する恐怖だった。それほどまでに、あのゴブリンは強かった。」
「それが分かっているのに‥‥何で先に進もうとする。これ以上進めば‥‥死ぬぞ?」
「えぇ、もちろん分かっているわ。だから、現状維持にしましょう。しばらくは6層のみで探索をする。そうすれば、あなたも満足に戦えて、私もEランクの環境に慣れることができる。まさに一石二鳥ですわよね?
それに、6層だけなら出てくる魔物もEランクの中でも最弱の魔物のみですし、あなたも余裕をもって守れるのではなくて?」
咲の言葉を聞いて――俺は考えた。
確かに咲の言う通り‥‥6層だけなら、守りながら戦うことは可能だろう。
6層の中間をゴールに設定し、そこを繰り返し往復しながら魔物を狩ることも出来る。1~5層を回るより効率も良く、ドロップ品もおいしいし、咲の練習にもなる。
正直‥‥断る理由はない。だが――言いなりになるのは癪だが‥‥いいだろう。
「はぁ‥‥分かった。確かにその案なら、安全を確保しながら探索することが出来る。ただし、疲れを感じていると俺が判断したら、絶対に従うこと‥‥守れる?」
「もちろん。それは当然よ。」
「よし、ならやろう。」
こうして俺達は、6層の探索を開始した。




