第34話 序列は決まり始める。
中学に入学して早一ヶ月が経った。
流石に一ヶ月も経てば初対面効果もなくなり、それぞれの友達のグループが出来ていた。もちろん、そのグループには序列というスクールカーストが存在し、このクラスの「頂点のグループ」は男女6名で構成された名家の人間であった。
やはりというべきか、スクールカーストにも「家柄や血筋」は大きく影響しており、上から順に大きい順となり、下は一般生徒のグループがカーストの最底辺となっていた。
だが、そのカーストにも大きな例外は存在する。
例えば、俺だ。家は一般で血筋もまるでないが、首席で入学し、生徒会の一員ということで、俺は完全に独立した個人として一人静かに学校生活を送っていた。
そうして今日も、名家の人間による自慢話と、その話にゴマをする連中の下らない会話が耳に入ってくるところから一日が始まる。
◇
「見てください、このペンダント!!ダンジョン産の宝石で作った物なんです。とっても綺麗じゃないですか?」
そう言う人物は、クラスのトップカーストの一人である「浅倉 桜」だった。浅倉家は音楽家として有名な家で、浅倉自身もピアノを弾き、その実力は全国クラスである。
浅倉の周りには、名家とまではいかないが、そこそこの家柄でクラスでは第2カーストぐらいの地位にいる人達が集まっていた。
こんな朝から自分のペンダントの自慢話を聞かされるこの人達は、気の毒だと言わざるを得ないが、それも良い家に生まれてしまった宿命なのだろうな。
そうしてしばらく浅倉の自慢話が続いていると、ガラガラと教室の扉が開き、入って来たのは女一人に男二人のグループで、浅倉と同じグループに所属しているカーストナンバーワングループの三人だった。
その三人を見るやいなや、浅倉はすぐに自慢話を止めて三人に近づき、今度は自分がゴマをするように話をするのだった。
そう。浅倉はこのグループの中では一番下の人間なのだ。だから、自分から話をして盛り上げる必要があり、必死に話をするその姿は、さっきまで気持ち良さそうに自慢話をしていた人物とは思えなかった。
そしてホームルーム開始のチャイムが鳴る10分前――このクラスの TOP OF TOP の二人が教室へと入って来た。
その人物は「南雲 啓」と「東雲 咲」の二人であった。
「南雲家」と「東雲家」は両家とも大型クランの出資者で、雪が契約したところも南雲家が出資しているクランの一つだ。ダンジョンで利益を上げた内の何割かを回収し、また新たなクランを設立して更なる利益を得ていた。
もちろん、そんなクランの出資者が俺の存在に気付いていないわけがなく、南雲は何度も俺に契約の話を持ってきていたが、当然受けるわけもなく断り続けていると、声を掛けてこなくなった。
だが、問題はそれで終わりじゃあなかった。
南雲の勧誘が無くなると、今度は東雲が声を掛けてきたのだが、その内容は契約ではなく――と教室に入って来た咲が俺の横にやって来た。
「おはよう‥‥悠真。」
「うん、おはよう、東雲さん。」
「何度も言ってるわよね?東雲さんではなく、咲と呼びなさいと。」
「いや、流石にね。校長の孫でもある君を呼び捨てには出来ないよ‥‥生徒会としてね。」
「関係ないわ。私がそう呼びなさいと言っているのだから、そうするべきなの。それに私はあなたに救われたのよ?私の命の恩人にさん付けで呼ばれるなんて嫌だわ。」
「う、うん‥‥分かったよ‥‥咲。これでいいでしょ?」
「ふふ。」
名前で呼ばれて嬉しかったのか、笑顔を浮かべて自分の席へと戻って行った。
そう。咲が俺に話しかけてきた内容は「私の友達になりなさい。そして、これから私のことは咲と名前で呼ぶこと。分かった?悠真」という訳の分からないものだった。
この話からも分かると思うが、俺と咲は初対面ではない。入学式が終わって一週間ぐらいが経った頃だろう。咲から急に呼び出しを受け、その顔を見た時に‥‥思い出したのだ。
彼女は病院で俺に話しかけて来た謎の少女で、俺が筋トレという物を教えた人物なのだ。そして咲は、俺に教わった筋トレをして病気に打ち克った。
その事実を聞かされたときは「偶然だよ」と言ったが、当然、咲はその事実を認めることはなく――俺と咲の関係は偶然の出会いから始まるのであった。




